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香港大富豪の風水要塞「明月楼」の謎

作者: 宵闇 灯架

多くの香港人が風水を信じているが、香港でも屈指の大富豪・王啓山ワン・チーシャンもその一人だった。

彼は、一般人では到底届かないほどの財を築いたが、心の奥底にはどうしても解けないある心のしこりがあった。

それは、最愛の妻・明月ミンユエの突然の死である。

多くの香港人が風水を信じているが、香港でも屈指の大富豪・王啓山ワン・チーシャンもその一人だった。

彼は、一般人では到底届かないほどの財を築いたが、心の奥底にはどうしても解けないある心のしこりがあった。

それは、最愛の妻・明月ミンユエの突然の死である。



事件の始まり:1989年の年末

1989年12月31日、王啓山は妻・明月とともにある晩餐会に参加した。

そして翌朝、1990年元旦の早朝――

突如として、明月が亡くなったという訃報が届く。


この死はあまりに不自然だった。


明月との関係と過去


明月と王啓山は幼なじみであり、従妹同士でもあった。

•王啓山は1930年、福建・福州で生まれ、その後一家で香港へ移住し、伯父の家に身を寄せた。

•1943年、父が病死する際に言った言葉が「人を頼るな、自分を頼れ。苦しみに耐えればこそ、人の上に立てる」。

•王啓山は学業を断念し、社会に出た。五金工場でセールスマンを務め、数ヶ月でトップ営業に。

•20歳でプラスチック工場の総経理に昇進、23歳で独立起業。


その際、資金的な窮地を救ったのが、当時家庭の裕福だった表妹・明月だった。

35歳のとき、4歳年下の明月と結婚。

二人の関係は良好で、3人の子に恵まれ、事業も順調そのものだった。


だが明月の突然死で全てが変わった。

当時、王啓山は「心臓発作による死」としか外部に語らなかった。



2005年:墓荒らしと風水師「財叔」の登場


2005年、突然明月の墓が荒らされる事件が起こる。

王啓山は激怒しつつも、何か不吉なものを感じ、

紹介を受けて香港の伝説的な風水師**財叔ツァイシュウ**に会う。


財叔はすでにその訪問を「予知していたかのよう」に冷静に応対し、こう言った。


「見てあげよう。だがまずは200万香港ドルいただく。」


そして一言――


「あなたの亡き妻、ひどい死に方をした。」


王啓山はその言葉に色を失う。なぜ彼がそれを知っているのか?

すぐさま報酬を支払い、助けを請うた。


明かされる「噂」と死の真相


民間ではずっとこう噂されていた:

•明月は晩餐会から帰ったその晩、娘とともに赤い服を着て首を吊って自殺した。

•娘は知的障害があり、詳細は知られていない。


この「赤い服での自殺」は、風水的に非常に恐ろしい死に方であり、

**死後、強い怨霊=厲鬼れいき**になって、夫に復讐するとされている。


財叔のこの一言で、王啓山は事の重大さを悟った。


明月の命格と「結婚できない理由」


王啓山はその後、再婚していない。

実はそれにも理由がある。

•財叔の推算で、明月の**生辰八字(命式)**は極めて強く、夫に富をもたらす命格だった。

•その命格が王家の繁栄に不可欠とされ、他の女性と結婚すればその効果が消えるという。


王啓山には多くの紅顔知己(愛人)がいたが、誰とも結婚しなかった。


特に**秘書・李蘭リイラン**とはビジネス・人生のパートナー的存在であり、

長年にわたり彼を支え続けた。


明月楼:風水で建てられた”棺材ビル”


財叔がまず行ったのは、香港・香江大学の近くに**「明月楼」**という建物を建設することだった。


その目的は:

•学生の陽気=生気を用いて、明月の陰気=怨霊の気を抑えること

•建物全体で、明月の霊魂を「封じ込める」ための風水結界


このビルの異常な特徴:

•外観は棺桶のような形

•上り専用のエレベーターしかなく、下りは階段のみ

→ 上がったら下りられない、つまり「魂を閉じ込める」意味

•屋上のガラスには**金剣紋(霊を封じる道具)**のような模様が彫られている

•全階の女子トイレには巨大な鏡。すべて柳州木製(上等な棺材木)で作られており、奇怪な模様が刻まれている

•鏡は各階で違う名がつけられており:

•1階:「戦国蟠螭文鏡」

•2階:「唐代海獣葡萄鏡」

•3階:「明代護心鏡」

•屋上には3本の噴水。まるで3本の線香のように、絶え間なく吹き上がっている


これら全てが、明月の霊を封じ込めるための風水装置だとされている。



学生の証言と噂


香江大学の学生の間ではこう語られる:

•明月楼を歩くと冷たい風が吹き抜ける

•女子トイレで誰もいないはずなのに、歌声が聞こえる


王啓山、現在とその思い


明月の死から30年以上。

王啓山は毎年、欠かさず彼女の命日に墓参りをしている。

今では歩くのも困難になったが、彼女のためには風雨をものともせず通っている。


秘書・李蘭もまた、数十年にわたり彼のそばで支え続けた。


そして最近――

王啓山は引退を宣言し、「長年の知己」李蘭とともに静かに表舞台を去った。


李蘭は、まるで王啓山の鎧のような守護者であり、

長年、明月の影とともに王家を支えてきた存在だった。


明月楼は風水に基づいて作られた**「怨霊封印建築」**である可能性がある

王啓山は「再婚しなかった」のではなく、「できなかった」のかもしれない...

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