今日も君の隣で
朝起きて、最初に目に映るのは、
眠たげな顔で布団の中から顔だけ出している、貴女。
「……おはよ、まだ寝たい……」
「うん、あと5分だけ」
「そう言って、君、いつも二度寝するんだから……」
「そしたら起こして」
「じゃあ私が先に起きる意味なくない?」
「ないねぇ~……うとうと……」
こうして今日も、私たちの一日が始まる。
目覚ましが鳴る前に目を覚まして、
隣の温もりに甘えて。
ちょっとだけ朝が遅くなって、
それでも変わらず“いつもの日”が来る。
それが、何よりも幸せだと――
私は、今になってやっと気づけた。
私たちは付き合って、もうすぐ二年になる。
最初は同じバイト先。
そのうち仲良くなって、映画を観に行くようになって、
ある夜、並んで桜を見た時に――不意に手を繋がれて、
そのまま、恋人になった。
告白らしい告白はなかった。
でも、不思議と疑わなかった。
この人と一緒にいられるなら、
恋人という名前なんて、あとからついてくるんだって。
それくらい自然に、私たちは恋をした。
「ねえ、今日の夜ご飯どうする?」
「うーん、カレー?」
「カレーは昨日食べた」
「うどん?」
「炭水化物しか出てこない!」
「じゃあ、カレーうどん!」
「それは繰り返しの暴力!!」
笑いながら、キッチンに立って、
鍋をのぞいたり、背後から抱きついたり。
こんなやりとりが、何でもない日々の中で繰り返されてる。
……それが、とても愛おしい。
イベントがなくてもいい。
特別なサプライズも、豪華な旅行もなくていい。
隣で笑っていてくれるだけで、私の一日は“特別”になる。
たまに、喧嘩もする。
「なんであのとき、そういう言い方するの?」
「だって、あんなふうに言われたら誰だって嫌だよ」
「だからって、あんな言い返し方……」
「もういい!」
「……うん、もういい」
お互い、黙って、背中を向ける夜もある。
だけど、翌朝になったら、
なんとなくごめんって目が合って、
そっと、手が触れる。
そしてまた、笑い合う。
それだけで十分。
それだけで、またちゃんと恋人になれる。
夜。
ソファで寄り添って、
観るともなくテレビを見ながら、
うとうとしていた私の髪を、貴女の指が優しく梳いた。
「……こうしてると、なんか夢みたい」
「ん?」
「隣にいてくれるの、ずっと当たり前じゃない気がするから。
毎日が宝物みたいで、ちょっとこわくなるの」
私は、微笑んだ。
「だからね。
ちゃんと言っとこうと思って」
「……うん」
「今日も、ありがとう。
貴女の横で笑える一日が、私は本当に幸せだった。」
「……わたしも」
ふたりの指が、静かに絡む。
どこまでも、あたたかい夜だった。
明日もまた、特別じゃない朝が来る。
でも、私は知ってる。
何気ない日々こそが、
いちばん深く、いちばん確かな“愛”だってこと。
貴女といられる日々。
その全部が、宝物。
だから私はまた、
貴女の隣で、笑おう。




