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売れっ子声優×売れない声優の百合

売れっ子声優、七瀬れい(27)。

トップクラスの演技力、歌唱力、イベント回し。

最近ではテレビでも見かけるようになった、声優界の星。


そして私――瀬川ことみ(28)。

細々とアニメやゲームの端役を務める、地味声優。


でも、私たちは恋人同士。


……バレたらヤバいとか言うけど、

正直れい行動力の方がよっぽどヤバい。



「ねえことみ、今回さ~、新作の異世界学園百合バトルものやるんだけど、

 生徒会長のライバル役、ことみにやってほしいなぁ~って思ってて!」


「えっ、また!?」


「うん!!脚本家の美月にお願いして、キャラ追加してもらったし! あと10日で収録!」


「えぇぇぇぇええ!? 原作の人、美月先生ってあの…!? え、そんな圧かけたの!?」


「だって、ことみと共演したいし? しないと不健康になるし?」


「知らんわ!!」


これで4クール連続で出ている。


もちろん、共演者やスタッフからはちょっとした都市伝説にされている。


「なんか、れいさんと一緒の仕事多くないですか?」


「前作も前々作も、えっ、付き合ってんの?」


「まさか~ハハハハ」


笑ってごまかしてるけど、

全部れいがゴリ押しした案件である。


しかも最近では――


「ことみのために新レーベル立ち上げてもらったの!」


「何やってんのアンタは!今すぐ断って来て!!」


「ええ〜、なんでことみも美月と同じこと言うかな。これは愛だよ!愛だから受け取って!!」


「売れっ子作家を私物化するな!美月先生の体調も考えなさい!」


売れっ子声優怖い....




そして、今日。


私は美月先生の打ち合わせに同行する羽目になった。


「で、ことみちゃん。今度の原作、“殺し屋がアイドルに恋する現代ドラマ”なんだけどさ」


「待って。これって、殺し屋役:私、アイドル役:れいって感じです?」


「正解!」


「やっぱりぃぃい!!」


「ちがうの! ことみの低音ボイスが“殺し屋にピッタリって話になって~!」


「バイオレンスじゃないの!! バイオレンス百合なの!!」


「ちなみにエピローグで結婚します」


「オチまで決まってるぅぅううう!!」



最早美月先生も染まりつつあった....




その日の夜。

私はれいを問い詰めた。


「ねえ、正直に言って。

 “アニメで共演したい”って願望、いつまで続けるつもり?」


「一生?」


「重てぇぇぇ!!!」


「だってことみとの収録楽しいし、

 スタジオで目を合わせながら芝居すると“あ、結婚したな”って気分になるし……」


「ねえ着いて行ってあげるから病院行こう……」


「しかも一緒のアフレコブースで喋ったあと、

 家で続きを“アドリブでやろっか”とか言われたら最高じゃない?」


「うーん精神科の病院何処かな?」


「ねえ辞めてよ、人を精神異常者みたいな感じで...」


「……えっ違うの!」


「泣いていい?」


「やめてやめて!私の良心が暴れ出すから!」


れいが両手で顔を覆いながらわたわたするのを見て、

私はソファに沈み込んだまま、ため息を吐いた。


「……いや、正直嬉しいんだけどね? 私なんかのために動いてくれるの」


「“私なんか”禁止!世界一可愛い恋人様なんだから!」


「はーいはい。でも、れいのやり方はさすがに重すぎるの。いくら美月先生が理解あるっていっても――」


「理解しかないよ?」


「いやあの人最近、打ち合わせで私を見るたび笑いながら原作構想呟いてるんですけど」


「え、なにそれ最高じゃん」


「こっちは胃が痛くなるんだけど!?」


私はバンッとクッションを叩いた。

れいは小動物のようにビクッとして、うるうるした目でこちらを見る。


……ずるい、あの顔はずるい。


「じゃあ、わかった。少し……いや、ほんの少しだけ控える」


「ほんとに?」


「うん、もう“原作のキャラ全員ことみのモブに転生させる”って案もボツにしたし」


「そんな地獄の作品構想あったの!?」


「主人公が異世界でモブA(声・ことみ)に恋する話」


「モブA出番一話だけでしょ!?」


「それでも恋するんだよ!」


「作者の病気は進行してるじゃないのよ!!」


あーもう、手に負えない。

……でも、どこまでも真剣なのが、この人らしい。



後日、美月先生に新作案を正式に断るれいを見て、私は思った。


(あれ、この人ほんとに我慢してる……)


その夜、れいはベッドの上でしくしく泣いていた。


「美月……美月に今回はれい抜きで考えてって言った...」


「うん....まあ嬉しい話ではあるけど美月先生に変な圧というか...まあ色々かけちゃ駄目だよ。」


「……ことみが言うならって……言ってた……」


「うん....やっぱり1度しっかり話した方が良いかな。あの人私達の事神格化しそう....いやもうしてるのか?」


....うん辞めようなんか怖くなってきた。


布団にくるまるれいを抱きしめながら、

私はぽつりと呟いた。


「……共演、私も嬉しいよ。でも、仕事として受けたいの」


「うん……わかってる……でも、もう無理かも……」


「……れい?」


「新作で共演決まったって……さっき連絡きた……」


「はやッ!!??」


「ことみとダブル主演の、極道シスター百合もの!」


「なんなの!?さっきの涙は“勝利宣言”だったの!?」


「世界観監修・美月、脚本協力・れい、プロデュース・運命!!」


「運命ってなんだよ!!!」


「ついでに主題歌デュエットだって!」


「やったぁぁぁ!!……って違う!なんで通ったの!?」


「ことみの誕生日を記念してだって!」


「もう全部私のせいになってるじゃない!!」


もはや止まらないこの連鎖。


でもまあ、いいか。


れいの私大好きパワー”に毎度巻き込まれるのも、

業界をねじ伏せる勢いで愛を押し通すのも、

最終的に私が笑ってしまうのも――


全部ひっくるめて、好きになったんだから。



そして数ヶ月後。

アニメ『シスターズ・オブ・ザ・レクイエム』は放送開始。


「この極道とシスターの関係、絶対プライベート引きずってるでしょ」


「アドリブ多くない!?」


「二人とも私生活で結婚してるんじゃ……?」


トレンドには当然のように


#七瀬瀬川入籍済疑惑

#またしても原作が愛

#ことみモブAで良かった


と並ぶのであった。


「ねえことみ、次は“宇宙規模の百合”ってどう?」


「宇宙に逃げても共演する気満々か!!」


「だって、ことみは私の“原作”だから!」


「うわ、うまいこと言った顔してるぅぅぅ!!」


こうしてまた一作、れいの恋と脚本が同時進行する――

私たちの“恋愛(原作)”は続いていく。


なんか後半勢いで書きすぎてワンチャンおかしいかも

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