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嫉妬する彼女を愛おしいと思う

昼休みの中庭には、今日も人だかりができていた。


その中心にいるのは、うちのクラスの“王子様”、白瀬しらせ れん


長身に、端整な顔立ち。

涼やかな目元と、いつも完璧な立ち居振る舞い。

同性の女子から憧れの視線を集め続けている彼女――


そして、その彼女の彼女である私は、教室の窓からそれを見ていた。


「……また囲まれてる」


思わずこぼれた声が、少し尖っていたのを自分でも感じる。

机の上ではお弁当が冷めていく。

それでも目は、彼女のところから離せなかった。


「モテるのはわかってる。前からだし、今さら驚かない」


でも。


「……けど、あの笑顔、私にも向けてくれたやつじゃん」


そう思うだけで、胸の奥がざわざわする。


嫉妬、してる。

ぐつぐつ煮えたぎって、どうしようもないほど。


付き合ってるのに。

毎朝一緒に登校してて、週末も映画行って、部屋でゲームして。

なのに、たった数十分の昼休みで、心が不安になる。


自分でも、ほんと面倒くさいって思う。


でも――それが恋ってやつなんでしょ?



午後の授業が終わって、私はさっさと帰る支度をした。

蓮が教室に戻ってくる前に出ようと思った。

なんとなく、顔を合わせたらまた変に意地を張りそうだったから。


でも、教室を出たところで、彼女は待っていた。


「おーい、逃げ足早いじゃん、うちの彼女さん」


「……別に逃げてないし」


「むぅ、それは冷たい」


蓮は笑って、私の肩に手を乗せる。

その仕草に心がきゅっとなる。

だって、彼女のこんな仕草を、さっきの女子たちにもしてたかもしれないから。


「……昼休み、楽しそうだったね」


「え?」


「囲まれて、話して、ああいうの、好きなんだ?」


蓮の笑顔が少しだけ消えた。


「……もしかして、嫉妬してる?」


「……してない」


「はい、ウソ~。顔がちょっと膨れてる」


「してないってば!」


思わず声を上げたら、蓮がちょっと驚いたような顔をした。

でもすぐに、優しく微笑んだ。


「ごめん。……ほんと、ごめん。

 ああいうの、断っても勝手に寄ってきて、

 無視すれば感じ悪く思われるし、でも君を不安にさせるのは違うし……」


「別に、責めてないよ」


「ううん。されても仕方ないよ。

 だって――こんなに愛されてるんだもん、私」


ぽん、と頭を撫でられる。


「嫉妬してくれるの、嬉しい。

 なんか、私だけの“君”って感じがするから」


「……うざい」


「でも、好きでしょ?」


「……うん」


私は俯いて、彼女の袖を掴んだ。


「好きだよ。……めちゃくちゃ。だから、怖くなる」


「私もだよ」


蓮はそっと耳元で囁いた。


「君が誰か他の子と仲良くしてたら、私だって同じように嫉妬する。

 だって、私は“彼女”なんだから。君の、一番になりたい」


それは、強がりじゃない、まっすぐな言葉だった。


こんなに好きにさせておいて、

こんなに不安にもさせておいて、

それでも――


「ずるいよ、蓮」


「うん。だから、ずるい彼女を、もっと好きになって?」


「……ずるい」


私は彼女の胸に顔を埋めた。


中庭じゃ見せない顔。

誰にも見せない、本当の蓮の心。


それが私だけのものだと思えるから、

嫉妬なんかよりも、もっと愛しくなる。


今日も私は、嫉妬して、拗ねて、

でもそれごと全部、彼女に包まれて、恋を深めていく。


この感情は、ぜんぶ恋の味だ。


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