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グワラニーが語るあの日の真実

 勇者との対決が終了し、グワラニーが大急ぎでやってきたミュランジ城の対岸。

 

「まあ、交渉は明後日以降になる」


「フランベーニュは多くのことを思い悩まねばならないだろうが、こちらは相手がやってくるのを待つだけ。つまり、暇だ」


「ということで、昨日プロエルメルで起こったことをバイアにも話しておこう」


 書簡を持たせたルジアニアを送り出した直後、笑顔のグワラニーはバイアにそう話かけた。


「最初の戦果」


「例の魔術師の正体がわかった」


「ブリターニャ王国の第一王子。アリスト・ブリターニャ」

「なるほど」


 その言葉を聞いたバイアがグワラニーの期待ほど驚くことがなかったのは、もちろんふたりが魔術師の正体について話し合ったときに、アリストを候補者に挙げていたからである。

 少しだけ残念そうな表情を見せたグワラニーは更なる情報を加える。


「これは魔術師長とデルフィン嬢。それからペパス。タルファ夫妻。ウビラタンとバロチナ、コリチーバだけの秘密ということになっている」

「まあ、それがいいでしょう。使えるネタですから」


 再びの不発。

 バイアを驚かすのを諦めたグワラニーは降参と言わんばかりの表情でバイアの言葉に応じる。

 そして、どうにか気を取り直したところで、言葉を続ける。


「他にも色々あるが、おまえにも覚えていてもらいたいことがあるので、そちらから話す」


「まず、勇者はやはり勇者だった」


「勇者一行の序列一位はアリスト・ブリターニャ。続いて、フローラという名の女魔術師。残り三人は同列。おそらく年齢順に勇者が最上位」


「三人の剣士は単純だが、正義感が強い。勇者一行の行動原理はここからきている。そして、彼らは困った者は見捨てられない」


「アリスト・ブリターニャに関しては、大魔術師というだけではなく、豪胆で交渉能力も高く、さらに洞察力もある。ワイバーンから買い入れた情報とはまったく違う。交渉してわかった。奴にブリターニャ軍を率いられたら非常に面倒なことになる」

「それに対してグワラニー様は何か手を打ってきたのですか?」

「デルフィン嬢のほぼ全力の力を見せてきた。それとともに、交渉にあたり、私は丸腰で臨んだ。理由はわかるな」

「フランベーニュでの噂の補完。というか、気が利く者こそ引っ掛かる出来の悪い小細工」

「そうだ。まあ、成功すればよし。失敗してもこちらに被害が出るものでもない。その程度のものではあるが、おそらく成功したと思う。それから、もうひとつ」


「奴らは話が通じる相手であり、こちらも奴らが求めれば今後も話し合いに応じる用意があることを伝えた」


「さらに、奴ら、というか、アリスト・ブリターニャは私を利用しようとしている節がある。これは特別な根拠もない奴の言葉の端々から感じた私の想像なのだが、アリスト・ブリターニャはおそらく魔族を根絶やしにするのは困難であることを理解している。そういうことであれば、占領地のあちらこちらで抵抗運動を起こされるより、自らの目が届く一定地域に押し込めたうえ自治権を与える間接統治こそ現実的な戦後だと考えている。そして、その長を私に担わせるつもりなのではないか。そのため避けられないような遭遇戦でもないかぎり戦いは望まない。そう思えた。もちろん私に利用価値がなくなれば方針転換はするだろうが」

「なるほど」


 バイアはグワラニーの言葉を驚きもせずに受け止めると、数瞬後、黒い笑みとともに返答する。


「まあ、そこはこちらもほぼ同じ。もっとも、立場的にはこちらが上位というか形ではありますが、まあ、そういうことであれば当面戦わなくて済みそうです。ですが、こちらは王からの命令があれば戦わなければなりません。それに相手の行動が完全に読み切れない以上、遭遇戦ということは常に考慮に入れるべき。例の準備だけは常に整えて置く必要はあるでしょう」

「そうだな。今回の件で懲りた。前線に出るときは最低五千を同行させることにしよう」


「そして、これは勇者とは直接関係ないことなのだが、プロエルメルに行って、人間の国を倒す方法は武力だけでないことに気づいた」

「それは?」

「民の待遇。フランベーニュでは、国家の核を成す農民の待遇が非常に悪い。占領地に住む農民たちの待遇を我が国の農民と同等にするだけ簡単に靡く。奴らの国の大部分の民がこちらにつけば、戦わずに勝てる」


「まあ、力で押さえつける支配など綻びが出れば一気に崩れるのは必然。融和こそ目指すべきものという我々の方針は間違っていなかったわけだ」


「そういうわけで、将来のことも考え、話がわかるロバウのような男をむやみに殺すわけにいかない」


「もし、渓谷内の戦いとクペル城失陥の責任で厳しい立場に追い込まれるようであれば、こちらに来るように声をかけておくことにしようと思う。できれば、ボルタ川の門番も」

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