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フレディがまだ学生だというのに結婚が決まった。幼馴染のイネスと結婚したいフレディが暴走したのかと思ったが、お相手は違うようだった。
『どういうことかしら?』
『なんで?』
『父様が決めたの?』
私たち姉妹の間を早馬が駆ける。
『やっぱりうちってお金に困っているのかしら?』
『正式な招待状が届いたわ。もう来月には結婚式よ』
とエリー姉様から。紅山にはまだその知らせが来ない。蒼山がエリー姉様に一番に手紙を書いたのかしら。それとも近いから?
私たちのせいで、どこのお山の飛脚も飛ぶように脚を動かしているに違いない。
「うちに招待状が届いてから騒げばいいものを」
とコットは冷静に言うけれど、こんな状況で呑気にしていられない。
「蒼山はもっと大騒ぎよ。フレディが結婚って、大丈夫なのかしら。まだ子どもよ」
「もう亡くなったが、うちの両親は10代で結婚をしたそうだよ」
「政略結婚? 恋愛?」
「さあ」
それらを聞かずに親を失ったコットを抱き締めたくなった。
そうか。この人にとって家族は私だけなのだ。ほぼ歩けないような足の私だけれど、長生きするよ。
ずっとそばにいて、たまにはこうして頭を撫でてあげる。
「また蒼山に行くのか」
コットが私を抱き締めて、ため息をつく。
「お祝い事でも気が重い?」
「リンネットの父様が意地悪する」
「今度はフレディが主役だし、姉様たちの旦那様も来るわ。次はちゃんと守るから」
蒼山の王子の結婚だから夫婦で出席することになるだろう。
「頼むよ」
「これから雪の季節なのに」
雪深くなれば荷馬車の往来も減る。
「だからその前にということだろう」
もうエリー姉様のところは降っているから、蒼山まで来るのが大変じゃないだろうか。
私はコットと話すのが好きなのに、コットは私の体が一番好きみたい。
ああでもない、こうでもないと話しながらするのも好き。いつからだろうね。こんなことしながら、どうでもいいこと話して、ふふふって笑えるようになったのは。幸せが見えるんじゃないかって本気で思う。




