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今日の手紙はエリー姉様からだった。霧山もう雪が積もっているらしい。
「エリー姉様からリンゴが届いたからパイを作るわね」
私は言った。
「そなたが? 王妃なのに?」
「王妃だから王のために作りたいの。ちょっとだけね、自信があるのよ。でもあなた甘いもの好きじゃないわね。甘さは控えめにしないと。シナモンは好き? カスタードは?」
「リンネットが作るものならなんでもいいさ」
人は幸せになるために生きていいのだと思う。わがままになって傍若無人に振る舞えということではない。自分の手の届く範囲で、伴侶に許してもらえる程度に。
少し焦げたアップルパイをコットはホールごと食べようとして、
「私も食べたいし、アンナたちにもあげたいの」
と少し険悪になる。
喧嘩に至らなかったのは、あなたが王様なのにわざわざアップルパイに合う紅茶を買って来てくれたことを知っているから。
お返しがしたくて私もその店に足を運んだら、その紅茶は、
『王と王妃推奨の紅茶』
に成り代わっていた。
いいのだけれど、王と王妃にも秘密はあるのよ。
私を見れば国民は手を振ってくれるが、私の足を忌み嫌っていることには気づいている。不便なのは私だし、一番迷惑をかけているコットが今のところは嫌じゃないみたいだから私も気にしない。
今日もコットは花を手に帰ってきた。きっとその花も『王と王妃推奨』になるのでしょう。その辺に咲いている野花でさえも。




