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翌日、父様とフレディにお礼を言って、私たちは紅山へ戻った。
緑のお茶で一服。
「初めての遠出は疲れたけど、楽しかったわ。今度はどこか姉様のところに泊りへ行こうかしら」
一番近いのはベルダ姉様の金山だけれど、標高の問題でしり込みしてしまう。途中まで行ってまた足が痛くなったら、動いた分だけ誰かに迷惑をかける。
「少し離れた領土内の温泉でもいいな」
とコットが言う。
「王が贅沢をするのはよくないわ」
「うちは質素なほうだよ。桃山は城もお皿ひとつとっても豪華だ」
「へえ」
サイカ姉様の手紙にもそのようなことが書いてあった。私は貴金属よりもコットとの暮らしを大事にしたい。それはお金とは比較できないものだ。サイカ姉様は変わってしまったのだろうか。
蒼山にいたときは霧山が遠くに見えたけれど、こっちに来たら金山が一番近い。天気がいいとぼんやり見える。
「お姉様が恋しいのか? こんなに手紙が来ているのに」
コットが今日も一枚手紙を渡してくれる。
「会って話すのとは違うもの」
思っていること書くのだからお喋りとは大違い。コットはお喋りもしないし手紙も書かないわ。変な人。友達いないのかしら。私もだけれど。
「私では役立たずかな?」
頭を撫でてちょっぴり悲しそうな顔をする。
「コットの相談をしたいのよ」
「どんな?」
「寝てるのにおっぱい揉むとか、仕事そっちのけで私に会いに来るとか」
「それは惚気と受け取られるのでは?」
「そうかしら」
一番の悩みなのに。
「足のことではないのか?」
「あら、すっかり忘れてたわ。不思議ね」




