88
コットと一緒にお風呂に入ったときに、
「実はサイカ姉様どころかその夫らしき人も見なかった」
と言った。
「なぜ?」
「戴冠式だから女王が主役なんだろうけど、その兄弟までもその場にいないっていうのはおかしい」
「反乱?」
と私は口走っていた。
「そういう感じでもなかった」
兵の動きや配置でコットにはわかるのだろう。
父は私が生まれたときから王だった。コットも出会ったときから王だった。フレディが王になるとき、私は疑問を抱くのだろうか。
父様も宰相のゲイローから報告を受けているのかしら。王になりたい人ばかりではない。しかし殺戮の話は幼少の私の耳にも届いていた。王位とは、人を惑わすものではないはずだ。この足だからなりたくないのではない。私には荷が重い。その運命ではなかっただけのこと。
お風呂上がりに廊下で父様と出くわしたら振り返って、声もかけずに行ってしまった。
「うちには夫婦が一緒にお風呂に入る風習ないから」
夫に抱きかかえている娘を見たくないのだろうか。父親心はわからんから無視。
「謝罪したほうがいいのか?」
コットは私の部屋に戻ってもオロオロ。
「父様のことなんて気にしなくていいわ」
私は顔にいろいろ塗りたぐるけれどコットはなにもしない。
「しかし…」
「いいのよ。私の幸せが父様の幸せでもあるの。だから父様はあなたに私を託したのよ。それよりコット、抱いてほしい」
「え?」
と躊躇するくせに、私が夜着を脱いだら触らずにはいられないらしい。
「あんまり声を出さないようにするから」
あなたに満たされたい。あなたを幸せにしたい。
「わかった」
寂しい私を一掃してくれる。孤独と幸福は正反対のようで近しいのかもしれない。
「コット、どうしよう。体が動いちゃう」
過去の私、がんばってくれてありがとう。あなたが死にたいって思った数以上に幸せだなって思いたいから、こうやってコットにたくさん抱いてもらう。
これって上手になったりするのかな。
「リンネット、泣いておるのか?」
「ええ。もう少しそのまま、止まらないでコット」
気持ち良すぎても女は泣くの。幸せすぎても。




