82
面倒臭いなと思っているところに、
「リンネット姉様」
とフレディが帰ってきた。
私は制服を着たことがないのでちょっと羨ましい。
「フレディ。学校へ行ってたの?」
当然、家のこともあるのであまり学校へは行けていないようだった。家庭教師もいるし。私は学校に行けず、ずっと姉様たちに勉強を教わった程度。
「はい。ただいまです」
「おかえりなさい」
昔みたい。
「リンネット姉様がいるなんて夢のようです」
フレディがかわいい。コットとは別の次元のかわいさだ。
「お義兄様もよくいらっしゃいました」
兄と呼ばれて悪い気はしないらしい。
「うん。お土産を持って来たぞ」
二人の共通点は石集め。鉄を含んでいるとか、溶岩がどうとか話し始めた。紅山では水晶がたくさん取れるから原石のまま。
「うわ、すげえ」
フレディが子どものように笑う。
フレディと父様は歳が離れているし、フレディがあまりにも母様に似ているから父様は涙ぐんでしまわれることが多くて。って、この二人だけで暮らしていて蒼山は大丈夫なのだろうか。
「蒼山からは桃山へ使者を出さなくていいの?」
私はフレディに尋ねた。うちとしては父様、フレディ、エリー姉様の順番で偉かったはず。
「僕は試験がありますし、父様は腰痛で。今回も宰相のゲイローに頼みました。もちろん、お祝いの品はもう送ってあります。サイカ姉様のご様子も気になりますが」
「そう」
フレディの話では、他の姉様も桃山には行かないらしい。北に霧山が見える。
「リンネット姉様にお伝えしようか今朝まで父様やサシャと話し合ったのですが…」
なにやらフレディが深刻な顔をする。
私が嫁入りしてすぐに、馬のマーヤが亡くなってしまったそうだ。私のせいなのか、娘のエンカと離したせいなのかもしれない。
「もうおばあさんだからね。しょうがないわ」
葬ってはくれたようで、そこで手を合わせた。もう一帯がコスモスに埋もれている。
戻ったら、エンカをたくさん撫でてあげよう。
「コットの馬だわ。いらっしゃい」
エンカがいた馬小屋で休んでいる。
名前をつけないのは紅山の流儀。コットに気づくと寄って来る。
「賢そうな馬ですね」
フレディには顔を撫でさせない。よく見るとトモに傷もある。コットとずっと一緒にいるのね。羨ましいわ。しかもこんなにでかいのに牝馬だった。さすがに馬に妬いたりしないが私は戦うコットを見ることはないのだろう。
「コット、部屋で少し休みましょう」
「馬車で足がむくんだかな?」
「そうかも」
久々の私の部屋は出て行ったときと何も変わっていない。
「リンネットの匂いがする」
とコットが微笑む。




