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王宮のもう誰も使っていないエリー姉様の部屋にはほとんど荷物がなかった。しっかり者の姉様のことだから嫁ぎ先の霧山に持って行ったのね。客間に変わっていたのでその部屋を使わせてもらった。
蒼山のメイドたちは初めて目にするキュリナの化粧の技術に見とれている。サシャの顔エステから始まり、髪の結い方、化粧講座まで。キュリナの手はまるで魔法だ。これってお金になるんじゃないかしら。
「ほかのみんなもキュリナは明日、コットと一緒に桃山に行ってしまいますからね。今日だけ奪い合いして。今ならなんと、私も使っているキュリナ考案のこの頬紅がたったの10カロン」
たくさん持ってきてよかった。
「ひとつください」
「私も」
大繁盛。そのお金を広間にいるコットに見せびらかす。
「でもこっちのお金でもらっても困る? 金のほうがいい?」
「いや、どこにでも両替商はいるさ」
とコットが教えてくれる。
「リンネット、いつもそうしているのか?」
父様が聞く。
「そうって?」
「その手だ」
隣りに座るコットが私の脇腹を支えるようにしてみぞおちあたりに手を置くから、私はその手の指毛を引っ張る癖がついてしまったようだった。コットは指の毛も4センチほどあって、クルクルしている毛もある。私が爪できゅっとしてそうなっているものと最初からクルクルで生えてきたものが共存している。
「ええ。なんというか、こうしているのが落ち着くので」
コットの指毛は私の眉毛よりも太い。
「すいません。家にいるように寛いでしまって」
コットがどや顔で返答する。それは娘婿の反撃のつもり?




