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私とコットが出かける日、たくさんの兵士が見送ってくれた。
当然、バーリーさんが残る。
「どこの王も桃山に出かけているから狙うとすれば山賊くらいだろう。頼むぞ」
「必ずお守りします」
トルル元大尉と婆も城から見送ってくれた。
みんなにお土産を持って帰ろう。
アンナとキュリナは他の馬車に乗っている。
「あなた一人だったらすんすん行けたでしょう?」
兵士が馬車を囲ってくれているが、コットも馬に乗るのが好きなはず。
「よいではないか。初めての旅行だ。今日は蒼山に辿り着ければいい」
コットは体も大きいし膝を開いて座るから馬車が揺れるたび私の脚に当たるのよね。
「結婚するときもこの道を通って来たわ。ベルダ姉様と来たのよ。昨日のことのよう。コット、お腹すいてない? ジャムサンドを作ったわ。あとお茶もあるからね。あら、もう国境ね。あそこ、黒峠というのよ」
コットは私ばかり見ている。
「リンネットを見ているほうが楽しいし、心が休まる」
そういうものなのかしら。嬉しいのは私も同じ。
お昼過ぎに城を出て、蒼山についたのは夕刻。コットの馬ならば半分ですむだろう。お尻の大きな馬で、コットの馬だからコット以外が乗るとその者は死刑らしいけれど、私も乗りたいから法律を変えてもらった。
王が許した者は王の馬に乗ってよし。
今日は私たちにくっついてきていた。ゆっくり歩いて明日の出番を待っている。
蒼山の王宮が見えてきた。そわそわしちゃう。ずっとここで育って、一年足らず出ていただけなのに。
「父様」
「おお、リンネット。よく来た」
久しぶりの我が家。でも、昔みたいに騒がしくない。いつも誰かの高笑いが聞こえていた。娘がいないとこんなに静かなのね。




