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バーリーさんも昼食を邪魔してはまずいと思ったのか手紙だけ置いて去る。
「コット、そろそろ冬に向けてすることが多いのでは? 木の幹を囲ったり、食料を確保したり」
蒼山ではそうしていた。
コットは、
「ああ」
と空返事。
書簡に目を通して、
「リンネット、父上様に手紙を書いてくれぬか?」
と言った。
「私が?」
桃山で戴冠式があるらしい。
「だから道中一泊させていただきたい。蒼山を過ぎると桃山までは荒れ地だ。悪党も多いから野営をしたくない。招待状が来たので行かぬわけにもゆかぬ」
サイカ姉様との結婚のときは書簡だけだったのに。いろいろ付き合いがあるのね。王様って大変。
「もちろん、いいわよ」
コットのお役に立てるなんて初めてのこととじゃないかしら。
父様よりもフレディのほうが気を使っていろいろ手を回してくれそうだけど、これはお山同士の正式なやりとりということよね。
『そういうわけなの。父様、よろしくお願いします』
「コット、書いたわ」
「うん、ありがとう。思ったのだが、リンネットも一緒に行くのはどうだろうか? リンネットは桃山に行かず、蒼山にいればよい」
コットが考えながら話す。
「いいのかしら? 私、これでも王妃よ。あなたがいないならちゃんと留守番をして紅山を守りたいわ」
「一度も里帰りをしていないのだ。リンネットも故郷が恋しいだろう? 周りの者には私から言っておこう」
コットはそれを気にしているようだ。
「本当にいいの? 本当に? まずはアンナに聞いてみるわ。アンナ、どう思う?」
遠くにいたアンナを呼び寄せて事情を話す。
「いいのではないでしょうか?」
嬉しい。
もしかしたらもう一生帰ることはないのではないかと思っていた。また途中で足が痛くなったらどうしよう。でも蒼山から紅山に来るときは大丈夫だったのだ。なによりもコットと出かけるのが嬉しい。
いざ、蒼山へ。




