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『マットをありがとう。重宝しています。
渓谷がきれいに色づいています。
雨も続きます』
エリー姉様の手紙、この間よりはましな気がする。生きる気力を少なからず感じる。文字もちゃんと姉様の字だ。
『こちらも紅葉がきれいです。
魚をありがとうございます』
とても臭い魚で、コットは食べるなと言うし、ラティウス料理長が言うには内臓を取り除いて生姜らしきものが入っているから保存食だろうということになり、私は食べてもよかったのだが毒見係が急に募集され、それならばとキュリナが食べたら、
「おいしい」
とわかり、臭い魚に翻弄され、みんなで丸一日ぐったり疲れた。
サイカ姉様からは栗が届いた。
『揚げ物が多く太った気がします。
こちらでは夏はハンモックで寝ていたので、やっぱり床のほうが落ち着きます』
といつも通りの短い手紙。
栗のままなら送れるが、栗タルトは日持ちしないからサイカ姉様も作れずにがっかりだろう。紅山には距離があるから無理でも蒼山だったら大丈夫だろうか。そもそも桃山に嫁いでお菓子は作れているのかもわからない。母様もそういえば料理をしていた記憶がない。王妃たるもの厨房に入るものではないのかもしれない。
『こちらからは芋を送りますね。この芋、甘いのでスイーツ作りに適していますわよ』
本当は私にも悩みがあるのだが書けなかった。
医者のハイエツに相談しても、
「そんなこともございましょうね」
と言われただけ。
やっぱり姉様の手紙に追記しようかしら。




