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紅山はその名の通り、秋になると赤く染まる山だ。
体調が回復した私はコットと色づいた山へ赴いた。
「銀杏ね」
風が吹くたび葉が舞い落ちてくる。
「ああ」
とコットはそれを手で受け止めた。すごいな。鈍い私にはできそうにない。
その山は上のほうに行っても足は痛くならなかった。
「方角なのかしら?」
磁場が関係しているのかもしれない。
「いや、高さの問題だろう。ここはそれほど高くないから」
コットったら、これから徐々に高い山に変えてゆく算段ね。
サイカ姉様からお米が届いたので、今日はにぎりめし。
紅山はパン食が多い。一年の今だけお米が他所のお山から入って来るらしい。
「秋は好きだ」
とコットが言う。
「お米が食べられるから?」
「いいや。山がきれいになるから」
「あなた、私が薄着になるから夏が好きだと言ったわ」
「言ったね」
さすがに遠くに護衛がいるからコットに覆われてキスをするだけ。
「冬は何て言うのかしら?」
「リンネットがくっついて眠ってくれるから好きだ」
「春は?」
「リンネットの好きな花が咲く」
私は結婚をして生きやすくなった。コットがこうして運んでくれるし、私以上に私を大事にしてくれる。
こうしてちょっと住んでいる山から離れると、お山に向かって手を合わせる。私も真似をする。
ギザギザの山だけれど、暮らしている人たちは皆優しい。言い伝えが嘘っぱちということもあるのね。今なら身に染みる。
「寒くなってきた。リンネット、帰ろう」
「はい」
私たちが遠出をすると写真の技師もついてきて、それが数日後に新聞に載っているらしい。その写真を集めてアンナが画集のように貼り付けてくれる。
コットが半袖だったのはわずかな期間だけ。毛むくじゃらをもしかしたら気にしているのかもしれない。私は、好きだけど。
「コット、あれ金山よね?」
高い山だから上のほうは雲がかかっている。
「ああ」
「ベルダ姉様元気かしら?」
「まだ輿入れして数日だろう」
「うん」
雲の中は雨なのかしら。こうして見えるだけで安心。他のお山は見えないんだもの。
今日は雲が多い。
馬車に戻るとコットが膝掛までかけてくれる。歩かないせいもあって左足は自分でも目を背けたくなるほど細い。
「ありがとう」
城ではエンカが婆に蹄の手入れをされていた。
至れり尽くせり。
こんなに幸せでバチが当たるんじゃないかしら。言葉にしたらコットが悲しむことがわかるからこの動かない足とトントンということにしておこう。
たっぷり時間を取る約束だったのにコットがくすぐったいことばかりするから心地よくて眠ってしまった。同じところばかり触るのはやめてって言わなくちゃ。




