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次の朝、ベルダ姉様は普段通りに戻っていた。そういう人なのだ。天気みたいな人。
「じゃあね、リンネット」
次に会うときはもうベルダ姉様は金山のお妃様。
「私も数日後には向かいますので」
ベルダ姉様の結婚式には私も出席予定。
「待ってるわ。パードリア4世、お世話になりました」
と姉様はコットに頭を下げる。
「道中、お気をつけて」
「ありがとう」
コットとベルダ姉様を見送った。
「すっきりした顔をしていたな」
「うん。お嫁に行く覚悟、私にはなかったな。あなたがいい人でよかった」
こんなふうに私を抱き上げてくれる人、他にはいないもの。
「もう蒼山には姉様がいないのだな。リンネット、寂しくなるな」
「どこにいたって姉妹は姉妹です」
ベルダ姉様もそれを理解してくれたように思う。
「またリンネット宛の手紙が増えるのか」
とコットがふうっと息を吐いた。
「一番大切なのはあなたよ」
本当なのに。
「今日はもう仕事はしない。ゆっくり温泉に浸かろう」
「だめよ。バーリーさんがベルダ姉様の婚儀に出席する服を決めてって」
「あいつに決めさせたらいい」
ずんずん歩いて、すれ違う人はひれ伏して、誰も止めてくれない。
「コット、お願い。姉様だけじゃなくてフレディにも会うのよ。ちゃんとしなくちゃ。贈り物の選定もしてください。私も一緒に考えるから」
頬をつねるとぷうっと膨れっ面をして、コットが踵を返す。
「俺って偉い王様だな。自分の欲望より人のことばかり」
「はいはい、とっても偉いわ」
褒めるついでにおでこにキスをしたらそれだけで上機嫌。
お祝いに赤い魚を贈るところもあるし、きんすしか受け取らないところもある。
バーリーさんが献上品を紙に書いたり実物を集めてくれていた。コットの執務室にはたまにしか入らないからドキドキする。本がたくさんあって、机には書類も山積み。
「金山に金を贈ってもなぁ」
コットは過去に金山と取引した書類を目に通していた。そういうことも加味されるのね。
「これから冬だし、ベルダ姉様は冷え性だから羊の毛のマットがいいと思うの」
私は提案した。
「金の糸でお祝いっぽくしたらいいのでは?」
バーリーさんが案を出す。
「刺繍なら手伝います」
下手だけれどできなくはない。
コットは私が関わることが嫌そうだった。あなたとの時間はちゃんと取るからとお願いしたら折れてくれる。
それから水晶とお酒。こういう出費は交際費に当たるらしい。私と結婚したばかりに、それが跳ね上がっているのではないだろうか。
ごめんなさい。感謝も込めてあとでゆっくり口づけをしてあげよう。
お金を稼ぐことはできないから、コットに帽子でも編もうかしら。喜びすぎてお城の中でもかぶっているのが目に浮かぶわ。




