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舞踏会とかしないのだ。どこのお山とも書簡のやり取りはするけれど、招いたり招かれたりはしない。
そう考えると蒼山は開かれていた。しかし、もう娘がいないから父様も舞踏会を縮小するのかしれない。
「この一年で娘全員を嫁に出して、お義父様も寂しいのでは?」
コットがベルダ姉様に聞く。
「どうかしら? 私たちは好き勝手に生活していたので金食い虫を減らしたかったのかも」
「そんなことないわよ」
私は言った。
「あなただってリンネットと結婚するときにうちにいくらか払ったでしょう?」
「それは…」
コットが口ごもる。
「大きいお金なの?」
私は聞いた。
遠くでバーリーさんがそんなこと聞くものじゃないと咳払いをする。コットも黙々と肉を口に運ぶ。
お山同士の結婚で幸せになる人は少ないのかもしれない。コットがたまたま優しくて、私も足が悪く、それぞれの事情でお互いを想っているだけ。
「これもおいしいわね」
揚げた野菜にこってりとしたソース。
「いつものソースより具沢山だわ。蒼山ではない味ですわよね」
私は言った。
「玉ねぎと卵かしら」
「あとで料理長にレシピを聞いておくわ」
私もたまに料理をすると言うとベルダ姉様は驚いていた。
「王妃なのに?」
「王妃だからよ。コットが遠征に行くときにはパンも焼くわ」
気持ちを込めて生地をこねるの。
「ああ。とてもおいしいジャムも作ってくれる」
とコットも嬉しそう。
これから実る秋や冬の果物はジャムに適してるかしら。私はそんなことばかり考えてしまう。
「リンネットが幸せならいいの」
デザートはミルフィーユだった。幸せが重なるようにとラティウス料理長が願って作ってくれたに違いない。
「コット、今日はお姉様と寝るわ。いいでしょ?」
食事を終えてコットに尋ねる。
「ああ。自分の部屋で眠るから構わないよ」
「ごめんなさいね」
とベルダ姉様も頭を下げる。
「いいえ、姉妹で話したいこともあるでしょう。ごゆるりとしてください」




