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コットに相談しても、
「リンネットの好きにしたらいい」
と言うだけ。
「金山ってあまりいい噂聞かないのよね」
私は言った。
その名の通り、金は取れるらしいが、商人たちが偽物の金を売りつけるとか、あくどい評判しか聞かない。
「あそこは貯水池がないのだ。だから水に困るとたかってくる。金脈が出れば金やお金で返してくれるがな」
とコットも国交はあっても進んで交流はしていないようだ。
「父様とフレディは知っているのかしら」
姉様の手紙からもいい印象がなさそうなことが窺える。
「どうだろ?」
紅山ってどことも仲良くしていない。強いて言うなら、遠くの霧山。今は私が嫁に来たから蒼山なのかもしれない。自分たちだけでお山を守れるという証なのだろう。ここへお嫁に来るまで水不足のお山があることも、それによって戦いが起こっていたことも私は知らなかった。雨が降らなければ雨乞いの儀式が蒼山では行われたが紅山ではそういったこともしないらしい。
フレディがにんにくやら果物を送って来る。ラティウス料理長は蒼山の料理長に手紙を書いて調理方法を聞いている。あっちにあって、こっちにないものもある。
当然、逆も然り。調理方法によっては毒にもなりうる。そうだ、胡椒が好きならコットは山椒も好きなはず。蒼山の山椒を気に入るといいな。ピリリとして私は得意じゃない。
『ベルダ姉様へ
ご結婚おめでとうございます。
是非、寄ってください。
結婚式の前にうちの温泉に入っていってくださいませ。お肌すべすべになりますよ。
楽しみにしています。 リンネット』
キュリナに姉様の髪と体をきれいにしてもらおう。きっと喜ぶわ。
手紙を書きながら、
「ベルダ姉様のお相手はどんな方?」
とコットに聞いた。
「金山は頭領がトップだが、かなりの歳だぞ。弟君はいなかったと思う。息子がいるとも聞いたことがない」
「じゃあ、その人がベルダ姉様の旦那さんなのかしら」
「おじいさんまではいかないが…」
ベルダ姉様からの手紙を読んで、まるで売られたような言い草が気になった。本当にそうなのかもしれない。
「蒼山ってお金に困ってないわよね? 私みたいにベルダ姉様も舞踏会で見初められたとかならいいけれど」
「最近は蒼山が金に困っているとは聞いたことがないな」
「最近ということは、前はあるのね?」
コットがしまったという顔をする。
「だいぶ前の話だよ。蒼山が不作のときに城の物を売りに出していたとか」
数年前、冷害でそんなこともあったと私も記憶している。コットが私に嘘をつくはずない。




