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国を守るということを私はほんのりしか習わなかった。弟のフレディには父様や執事がたくさん教えていた。戦法から自害の仕方まで。そうしないで済むように、フレディには生きてほしいと思う。
霧山に嫁いだエリー姉様からも手紙が届いた。
『言葉にするのは難しいけれど、話し言葉が独特で、語尾は変だし一番困るのは「の」の使い方。「のぅ」とか「のっ」は同意で、「のー」は反対なの。難しいから相手の顔で判断してるわ』
聡明なエリー姉様は霧山に行ってから苦労をしているのだろうが、なんだか楽しそうとも感じられる文脈だ。
本日のコットは出かけていた間に届いた書簡や意見書に目を通すのがお仕事。長く城を留守にしていたときはいつもそう。私の部屋で私がお化粧をされたり髪を結っているのをちらりと見ては微笑む。私も仕事をしたほうがいいのだろうか。
『エリー姉様、王妃の仕事ってあるのかしら?』
エリー姉様からのお返事には藁でかごを編んでいると書いてあった。
コットはうるさくないけれどバーリーさんが、
「リンネット様、手紙が多すぎませんか?」
と文句を言う。
だって、手紙を書く以外に時間の潰し方がわからないんだもの。
「ただの手紙ですよ。お山の情報なんて、私が知っていると思って?」
「ですが、くれぐれもご用心くださいね」
と念を押される。




