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足の悪い私が男だったら、それもまた問題視されただろう。
「キュリナが作ったシャンプーですよ。抜け毛に効くそうです」
コットの怒りが収まるように私が洗ってあげる。泡立てるといい匂い。
「悩んでおらん」
「キュリナの調べでは体毛が濃い人ほど頭は禿げるんですって。あなたも気を付けて。私が洗いますね。コット、引っ張って」
「ん」
立つことは今まででもできた。
「見てて」
私は歩いて見せた。たったの一歩だけだけれど。
「リンネット」
「キュリナがいると安心して歩く練習ができるの。杖もカトも便利だけど私、あなたと歩きたいわ。お願い、彼女を私から離さないで」
裸で抱きついたらあなたが絶対にノーと言えないことを知っている。
「わかったよ」
それに街ではキュリナのように女装する人も窮屈そうに生きているらしい。キュリナはすごいのに。
キュリナのシャンプーでコットの頭を洗う。
「どう?」
「すごくすうっとする」
とコットが目を細めた。
「キュリナは私よりもあなたに気があるようで。あなたに昔、戦場で助けられたとか」
つまるところ、私のライバルでもある。
「助けた者の顔などいちいち覚えておらん」
「助けられた側は一生忘れないわ」
私は幾度も助けられてきた。この足を憎む分だけ人に感謝もしてきた人生だった。
「そんなことを話していいのか? 浮気をするかもしれんぞ」
コットが意地悪そうに笑う。
「私、知ってるんです。あなたが私を好きなこと」
私みたいな女を好きなんて、変な人。髪を切ってくれた女店主さんみたいにボインじゃないし、サイカ姉様みたいにおいしいお菓子も作れない。
足が悪いことは取り柄じゃない。
ベッドがいいのに、こんなところで抱き合って、王様と王妃なのに猜疑心がなさすぎる? 羞恥心もない。だって、久しぶりなんだもの。久々に会ったらキスがしたいの、夫婦だから。
あなたとの間に隙間がないの、好き。コットの伸びた髭が私の体のあちこちを刺激する。




