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人の心配をしている場合じゃなかった。
紅山は蒼山よりも暑い。日差しが強い気がする。
「暑い。エリー姉様が手紙に書いていたかき氷ってどんなものかしら? 夏なのに氷って? 甘いらしいけど」
シロップがどうとか書いてあった。果物を乗せて食するとか。
氷を貯蔵しているのかしら。
「甘い汁ならそなたのでいい」
「コット、それどういう意味?」
と私が聞いてもコットは答えてくれなかった。
「では、仕事に行ってくる」
「いってらっしゃい」
王妃っぽく見送りたいのにコットがぎゅっとして離してくれない。髪を撫でてくれるのは嬉しいけれど、そろそろごわごわ。切り時ね。
そんなわけで、街へ出てみました。
コットがいないからバーリーさんに許可を取って、トルル元大尉ともう一人護衛、更にアンナまでついてきた。
「馬車なら安心ね」
紅山の街へ出向くのは初めて。
お城は立派でも城下はまだ小屋の店が並んでいる。中には木や石の清潔そうな店もある。
キャンディ屋さんもある。あっちは果物屋さんに桶屋さん。
アンナが美容室を探しておいてくれた。
アンナもだけれどこちらの女性は外出時、髪を帽子の中にまとめてしまう人が多い。髪の色はオレンジかオリーブ。私はオレンジでコットも暗めのオレンジ。私たちの子どももきっと同じような色になるでしょう。霧山は黒が多く桃山は茶色が多いと聞いたことがある。蒼山は紫や黄色、赤茶と様々な人が混在していた。
「失礼します」
こういうところに不慣れなのは私だけではなかった。アンナも護衛の二人もしゃれた店内を見回すばかり。
城勤めの真面目な人は盛り場へ遊びに行かないのかしら。カフェにも行ってみたい。
「いらっしゃい」
店主なのだろうか。彼女の谷間に私の目が釘付けになる。お城に巨乳はいないもの。姉妹の中ではエリー姉様が一番だった。それをはるかに上回るボリュームだ。
「髪を切りたいのですが」
私は言った。
「どうぞ。どんな感じに?」
促されて私は椅子に座った。
「あまり切りたくはないのですけど潤いもないので」
店主が私の髪を雑に触る。
「そうね。温泉好きでしょう?」
そんなことまでわかるのね。
「はい」
「痛んでるところだけ切って、重たい部分を透きましょう」
お任せにした。
私たち以外に客はいない。店には鏡があって、通りをゆく人々が見える。暑いとノースリーブにレースを羽織るのがこちらの流儀なのかしら。それとも流行りなのだろうか。




