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『自分が霧山にいるなんて嘘のようです。
わかっていたけれど、とても質素な暮らし向きです。住まいが木というか、藁っぽいというか。まるで、原始時代です。椅子もないし。枕も硬い。
学校もないのよ。
なにもかもが蒼山と違います。
ごはんは一日二回で、しかも大皿を回すシステムだから嫁に来たばかりの私は最後に残飯のようなものを食べています。でもお腹がすくから食べちゃうの。辛いものが多いから甘党のリンネットは暮らせないわね。
唯一の救いは夫がイケメンです。塩顔ですが、整っています。そっけないですが、それも面白くなってきました。
私を迎えるときに花の首飾りをくれました。それが大事なものに思えます。
面倒なのは義理の母が三人います。小姑もいます。乳母とメイドが似ていて区別がつきません』
エリー姉様の手紙は淡々と状況が綴られていた。文脈からすると、周囲は面倒だが夫の顔だけ好きというところだろうか。
結婚に浮かれていないところがエリー姉様らしい。
「救いがあるのは大事よね」
コットも頷く。私だって足が悪いのにコットは好いてくれている。
エリー姉様からの贈り物は見たこともない鳥の羽だった。
「こんな羽根の鳥がいるってことよね。どれだけ大きいのかしら」
私の顔よりも羽が大きい。青いし、光の加減で所々光って見える。
コットの首をそれでこちょこちょしたら、
「やめろ」
と笑いだした。
「くすぐったいの苦手?」
「当たり前だ。やめないとこうするぞ」
押し倒されて私に大男のあなたが乗っかっているのにどうして重くないのだろう。本気で怒らないコットが好き。たまにする大笑いも好き。エリー姉様も笑っているといいのだけれど。
エリー姉様の結婚式はもう済んでいるようだった。紅山に通達は来ない。お互いに連絡を取らないのに信頼しているなんて、不思議な関係。
『エリー姉様へ
私もたまに目が覚めて蒼山にいないことにびっくりする自分がいます。コットのイビキがうるさいのに苦じゃないし。
そちらは甘味が少ないとのことなので焼きメレンゲを送ります。こちらのお茶は緑なので、それも送ります』
『お菓子とお茶をありがとう、リンネット。
知らなかったけど、どうやらこの手紙、検閲されてるみたい。姉妹でももう違うお山だから仕方がないわね。
うちの旦那様のアレックは王ではなくお館様と呼ばれています。私は夫人です。エリー夫人。慣れなくて、恥ずかしいです。
冬は寒いと聞いているけれど、おかげで夏は快適です。かき氷というものを食べました。甘かったです』




