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コットは私が手紙を書けるように紙を広げてくれる。
『エリー姉様、ご結婚おめでとうございます』
そこで筆が止まってしまった。
「どうした?」
コットが聞く。
「『結婚できてよかったですね』って書こうとして、なんか上から目線ぽいから手が止まっているところ」
「素直に気持ちを書いたらいいのに」
「むつかしいのよ」
おめでとうと伝えたいだけ。
昔はこんなことにいちいち葛藤しなかった。
私も結婚をして蒼山を出た身だから言葉を選んでしまう。
一番上のエリー姉様の嫁ぎ先がようやく決まって父様は胸を撫でおろしているかだろうとかどうでもいい。
「姉妹もなかなかややこしいな」
「そうなの」
コットは小さいときにお兄様を亡くされたトラウマの持ち主。この五年の間にご両親と妹さんを亡くされて、腐りきった政治をする前王を倒して王になった強い人。
「うちは古くから霧山とは国交があるんだ」
コットが糖分でべとつく手をふきんで拭ってくれる。
「遠いのに、そうなの?」
「向こうが不作ならば小麦を送り、こちらが困ったときは米を送ってくれる」
「大事よね」
民が飢えることのないように備蓄はしていても寒冷や水害などはどうにもならない。
「コット、蒼山が困ってもそうしてね」
「当然だ」
四人の娘たちを嫁にやって、蒼山の父は安心を得ているのかもしれない。悪いことじゃない。ずっと前から行われてきたことだ。
サイカ姉様の結婚相手のところじゃなくてよかったとほっとしているのはエリー姉様も同じだろうが、もっとひどい慣習もあるだろう。
私は足が動かないから、父が便宜を図ってくれたのだろうか。コットが選んでくれたなんて嘘かもしれない。
「コット」
名前を呼べば抱き締めてくれる。エリー姉様は毛深い人は嫌いと言っていた。だめよ、誰にもあげない。




