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謝罪の気持ちもあってなのか、トルル元大尉は城の馬係として婆と一緒に働けることになった。
エンカが懐かず、トルル元大佐を敵視する。
「男が苦手なのかな。でもコットに撫でられるのは好きなのよね」
トルル元大佐は器用だと婆が褒める。
「縄の締め方とか知ってるだけですよ」
と謙遜する。
「だったら、カトを作ってもらえませんか?」
私はお願いした。
「カトとは?」
紅山では見たことがない。
「こういうものです。ここに私が乗れます」
地面に描いたが、私の下手な絵では伝わらない。
「馬があるじゃないですか」
「馬では城の中での移動ができないわ」
杖もちょっと動くだけならいいけど、長く使用すると脇の下がうっ血するのだ。
「ここが車輪なのか。馬車の小型版のような?」
トルル元大尉は私の描いたカトをアレンジする。
「全然違う。後ろから押してもらうの」
と説明した。
「ほう。この車輪の部分をもっと大きくして、手が届くくらいにしたら自分で操作できるかな」
「え、すごい」
そうなったら誰かの手を煩わせる必要もない。
「リンネット様、パンを作る時間ですよ」
とアンナから声がかかる。
「はーい」
「忙しい王妃様ですね」
とトルル元大尉が笑った。うん、やっぱり笑うとバーリーさんにそっくり。
「今日はね、ジャムも作るの。余ったら二人にも持ってくるわね」
パンもいいけどジャムも保存食と気づいた。
コットはこのところ、出かけてばかりいる。私に秘密にしているということは、もしかして戦かもしれない。
調理室へ入る前に服を着替えて、手も洗った。
「リンネット様、パンの生地をこねます。王は硬いパンが好きですし、遠征のときにも持ってゆかれるので」
ラティウス料理長が粉を振るう。
「はい」
私の作ったパンをずっと食べてもらいたい。
「そのままここに叩きつけて。空気を抜きます」
「はい。えいっ」
心配かけたくないからって、話してくれないほうが心配なのよ。
「いいです。もっと強く」
「はい」
パンを焼くのは薪のオーブン。
次はジャム。ベリーを砂糖と煮詰める。




