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それから私はサイカ姉様あてにお手紙を書いた。
コットは仕事。私はお手紙。
『お幸せに』
そうだわ、お祝いの品も送りたい。こっちの調理器具はどうかしら。蒼山からも私のとき同様、たくさん贈られるはずだろう。自分で管理できる程度にしたほうがいいとも書き足さなくちゃ。
「コット、姉様に贈るものはなにがいいかしらね?」
夜、コットはベッドの上で私が手紙を書き終えるのを待っている。
「きんす?」
「やだ、かわいくない」
でも考えてみたら装飾品もお山によるし、蒼山を出た私が贈る品は紅山の王妃としてになるだろう。
世間体とか面倒臭い。
「サイカ姉様はリンネットのすぐ上の姉様だったかな?」
コットが聞く。
「そうよ」
「一番上の姉上様は大丈夫なのか? その、立場とか」
コットに指摘されるまで、そんなこと考えたこともなかった。
「あるのかしら、そういうの」
「長子という目で周りは見ているだろうからな」
手紙を封に入れコットに視線を送ると何も言わずに私をベッドへ運んでくれた。サシャ並みに思考を読んでくれる。
「エリー姉様は髪が長くてきれいなのよ。肌もモチモチだし」
貧相な私とは大違い。
「しかし、いい歳だろう? 性格に難があるのか?」
「ないわよ」
と怒鳴ってしまって、コットに背を向けたまま寝た。
「リンネット、怒ったのか?」
コットが私の血管をなぞるように触れてくる。太腿の毛が私の足に触れて、くすぐったくても寝たふり。私が本当に眠っていてもこんなふうにいつまでも撫でているのかしら。
エリー姉様が結婚できないのは父様のせいなのだろうか。私はこの足だから早く嫁に出したかったとはいえ、確かに順序があるわ。お相手が三男だからうちも三女なんて馬鹿げている。利口なフレディが気づいていないはずもないでしょうに。
まさか優しいエリー姉様のことだから、私を一緒に連れて行けるお相手を探してくれていたのではあるまいか。もしくは私と蒼山に骨を埋める覚悟だったのかもしれない。
そんなこと、お祝いの手紙には書けやしないし。
「どう思う、アンナ?」
一晩考えたが結論は出なかったのでアンナに聞いてみた。
「他のお山のことですし、わかりかねます」
婆に同じ質問をしたら、
「運命ですじゃ」
と返ってきた。そう思えば楽なのだろう。
エンカは婆に懐いて手招きで駆けてくるようになった。
紅山には大きな一枚岩に手を合わせる習わしがあったので、遠くから姉様たちの幸せを願うことしかできない。




