28
夕飯はパンもなくおかずだけで、肉も魚もレモン味。これが祝いのメニューなのだろうか。
それを食べ終えるとお風呂に入らされた。
ああ、やっぱり自分のパジャマを持ってきたかったな。落ち着かない。こちらの夜着は薄くて、よく見たら透けそう。
カトが見つからないからアンナが肩を貸してくれる。左足が悪いのに右肩を支えられても困る。前に進めない。
「初夜なのに全然部屋に辿り着けないじゃないですか。王様を呼んできます」
アンナはたぶん、自分に怒っていたのだと思う。私の対処に困り、左肩を支えてくれたら私も歩けるのに、きっと誰かを支えたことがないのだろう。
私も部屋もそうだけど、蝋燭ではなく液体から火が出て廊下を照らしている。こんなランプもあるのね。
王様がずんずん歩いてきて、無言で私を抱えた。
その夜、アンナはもう姿を見せなかった。
「すいません」
「構わない」
ベッドにぽーん。
「あ、待ってください。お風呂のあとなので顔に乳液を塗りたいです。つっぱっちゃう。でも、どこだろう? 持って来たはずなのに」
どうやらまだ私の荷物は全然片づいていないようだった。父様からの時計は見つかった。
「これを侍女に用意させた」
こちらでは美液というらしい。
「ありがとうございます」
「塗ってやろうか?」
「嫌です」
塗りながらマッサージをするのだ。私が左右の頬を指で引っ張り上げるように塗り込むのを王様がじっと待っている。
「どうして私を選ばれたのですか?」
退屈そうな彼に聞いた。
「そなたは顔がきれいだ」
「それだけ? 足のことは本当に気になりませんでしたか?」
「数年前、流行り病で家族を亡くした。少し前に旅に出たせいだった。足が悪ければ遠くへ行くこともないだろう。ほうら、そなたが思っているよりも性格が悪い」
「あははははっ。自分で仰らないで」
「もうお喋りはいいかな」
そわそわした様子で私を抱き締める。
「お姉様たちのほうがきれいですよ。私は世の中を知らないけれど、私よりきれいな人はたくさんいます。本当にいいのですか?」
「私はそなたに見惚れた」
王様の手は大きくて、私の顔をすっぽりと包んだ。昨日よりも長い口づけ。
「こんなことしたら、あなたのこと好きになってしまいますよ」
「嬉しいよ。初夜の作法は?」
「姉様からはベッドから出てはいけないと。でも私ではたぶん逃げようがないと」
「違いない」
とまた笑った。
「あ」
こんな夜着、着ている意味もない。
「そなたはいつも手が冷たいな」
「じゃあ、あなたがずっと温めてください。私たち、ずっと一緒にいるんでしょう?」
「ああ」
私の細すぎる骨と皮だけの左足を見てびっくりしたようだけれど、目を逸らしてくれた。代わりに右ひざを抱えた。
体が割かれるような痛みのあとで、どうしてだかわからないけれど気持ちよくなって、そのままこてんと寝てしまった。




