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婚礼式のために早起きして、化粧を塗り手繰られる。髪をひっつめられ、婚礼の衣装に身を包む。派手な布でドレスというよりも生地。服は頭を通すだけで、他の帯のような布で腹を締められる。
「私のカトは?」
あれがなくては誰かの手を煩わせることになる。
「探したのですが荷物が多すぎて」
と侍女のアンナが申し訳なさそうに答える。
「そう」
午前中に婚儀。ひんやりした教会は城の中にあった。そこで王冠を互いに頭に乗せ合う。白いガウンのようなものを身にまとったおじいさんがむにゃむにゃ言っていた。
私には宗教の概念がない。紅山はどうなのだろう。宣言なのだろうか。聞き取ろうとしたけれどわからなかった。
昼食はサンドイッチ。今朝は衣装の滅茶苦茶腹を締めるからなしだった。
「おいしい。チーズだ」
王様は私の倍以上食べていた。
こっちのチーズは蒼山より黄色っぽい。野菜は挟まないのね。そういう流儀なのかしら。
ピクルス入ってる。苦手だわ。そんなに酸味は強くない。山椒にむせる。
「大丈夫か? おい、医者を呼べ。料理人は誰だ?」
ひぇー。王様の大きな声に使用人たちの空気がぴりつく。
「大丈夫です。ちょっと辛くて。お水をいただけますか?」
「おい、水」
「あ、やっぱりみかん水を」
「みかん水?」
「ジュースを」
しゅしゅしゅ。
なぜなの? お酒でもないのに炭酸なの? そして、真っ白な服を着た偉そうな料理人の人がわざわざグラスに注ぐ。自分でやるのに。
アンナがあんなに遠くにいる。
王様が私を食い入るように見ている。
「いただきます。甘い」
これなら飲める。
「当方でジュースは柘榴なのだが、大丈夫かな?」
「おいしいけど、酔いそう」
「酒は入っていない」
ちょっと酸っぱくて、甘い。
「おいしい」
「おい、おかわりを」
ここは食堂のような場所なのだろうか。長い机のお誕生日席に王様、斜め向かいに私。
「いつもこちらでごはんをお召し上がりになるの?」
私は尋ねた。
「どこでも。そなたが部屋のほうがよければ運ぼう」
「お外でも気持ちよさそう」
「そうだな。一緒に行こう」
もうこの人と結婚したんだわ。昨日まで他人だったのに、不思議。




