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紅山のお山が近づいてくる。
それを見て、ベルダ姉様が黙る。私たちは荒れている山はそこに住む者も荒れていると聞いて育っているからだ。
「なんというか、ギザギザですわね」
揺れる馬車の中で私は言った。
「そ、そうね」
珍しくベルダ姉様も返答に困る。
蒼山を出て来たときと同じように紅山では民衆に迎えられた。
「よかったわ。こちらの王様のようにみんな大きい人ばかりなのかと思っていたけれど民たちは私たちと変わらないわね。子どももいる。確か、女の子は5歳まで外に出さないのよね」
初耳だ。
「ベルダ姉様、フレディに聞いたの?」
「妹が嫁ぐ場所だもの。それくらい調べるわ」
「ありがとう」
フレディったら姉様じゃなくて私に教えてくれたらいいのに。私では策略とかできないと思われているのかもしれない。こんな私がどこに嫁ごうと大きくは変わらない。
「リンネット、見て。お城よ」
ベルダ姉様は城に憧れていた。
うちの王宮は居住スペースも父の仕事場も同じで、繭のような建物が続いているだけだからフレディの書物で見た城を夢見ていた。
「大きいわ」
その城の前で馬車が止まる。
こんなところで降ろされても困る。だって、私は歩けないし。
「リンネット、降りれる?」
「はい」
ベルダ姉様が手を引いてくれた。
「リンネット様のおいでなーり」
城の前の衛兵たちが頭を下げる。
「当家では妻の体に触れていい男は夫だけと決まっている。まだ婚儀の前だが許せ」
ふわっと王様に抱き上げられた。この感覚も懐かしい。小さきときは父様がずっとそうしてくれていたから。私って、やっぱり手のかかる娘だったんだな。




