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 初めてのあの方からの手紙は馬についてだった。

 馬蹄の管理をする者もいるし、

「馬と話せる婆がいるらしいわ」

 と私が言うと姉様方がげらげら笑った。


「大丈夫なの、あのお山」

「しっかりしていそうな国だと思ってたけど」

 とフレディまで。


「ん? この書簡、今までの筆跡と違うわ。あの方が書いたのかしら」

 ハネの部分がちょっと乱暴で、文字全体が右肩上がり。


「馬と話せる婆が書いたんじゃない?」

「ベルダ、笑わせないで」

 私たちは手紙ひとつでけらけら笑っていた。フレディはその間も私のために薬を用意してくれていた。芋虫を乾かしたものなんて絶対に嫌よ。


 サイカ姉様は保存の効くお菓子を作り、エリー姉様とベルダ姉様は母様の形見を漁っているようだった。


 私は自分に重要なものがあまりわからなくて、杖以外はみんながくれたものになってしまった。


「リンネット様、新しい口紅ですよ」

 サシャがふたを開ける。


「赤すぎない?」

 こんなのつけたことない。


「もう王妃なのですから」

 サシャは私と目が合うたび涙を目に溜めた。


 私は私以外の人が私のことで泣くのが苦手。それが嬉し涙でも。結婚が決まってから益々そう思う。

 それを手紙にしたためると、

『少しわかります』

 と、右肩上がりの文字で返事が来た。


 結婚までは本当に短かった。恐らく、私が生きてきた人生の中で最もせわしなく、ある意味充実していて、それでいて嬉しくて物悲しい。

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