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 私が手紙をしたためると紅山からは返事が届いた。トイレの構造まで。


「紅山の技術力はうちよりも上じゃないかな」

 とフレディも言う。

「そんなことよりもあの方は今も戦っているのかしら。心配だわ。結婚前に婚約者が亡くなったらどうなるの? ああ、こんなことを考えてはいけないわ」


 私の身の回りの整理はサシャがしてくれた。

「姫様、この下着はもう捨てますよ。もう王妃になるのですから」


 取捨選択のとき。

「さようなら、私のダルダルパンツ。この肌着は必要かしら?」

「紅山はこっちよりも寒暖差が激しいらしいですよ」

「困ったわ。私、冷え性なのに」


 必要なものとそうでないものを区分け。輿入れだから見栄まで持たされて、どんどん荷が膨れる。

「姉様の荷物にこの本を紛れさせておくれよ。長い物語だから暇なときに読むといい」

「ありがとう、フレディ」

「それから頭痛の漢方。いい匂いのクリーム」

 次から次へと荷物が増える。


「フレディ様、女の部屋に入り浸るものではございません」

 近頃サシャはフレディにそんなことばかり言う。

「姉様とはあと僅かしか一緒にいられないんだ」


 父様は婚礼の服が紅山で作られることが気に入らないらしい。

 今宵はエリー姉様と眠る。

「母様の衣装なんて30年も前のものだし、私たちは嫁入りする側なんだからしょうがないわよね」

 エリー姉様が髪を梳いてくれる。

「ええ。そうですわね」


「リンネット、これ持って行って」

 姉様が私の手中に櫛を納める。


「お気に入りでしょ? 姉様の髪がきれいなのはこれのおかげだっていつも」

「遠くに行く妹のほうが大事に決まっているでしょうが」

 うちの姉妹はなぜか生まれた順に背が高い。フレディなんて男なのに私と同じ。これから成長するのかもしれない。


「姉様、私は嫁に行くけど遊びに来てくださいましね」

「うん」

 私よりがっちりしたエリー姉様を抱き締めながら、私は父に使える従者たちの話を聞いてしまったことを思い出していた。

「これでいざというときは紅山に助けを求められますな」

「娘が四人もいるんだ。手駒は多いほうがいい」

「金と手が一番かかるリンネット様が一番先とは」

「こちらにとっては願ったりかなったりだ」

 父の従者たちはいつも笑顔で優しい人ばかりだと思っていた。それは表向きのこと。


 確かにそうだわ。私みたいな厄介な女を妻にして、あの方には利点があるのだろうか。


 エリー姉様は昔から寝つきがいい。私の心配事など忘れて、もうすやすや。


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