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 それからはトントン拍子に私たちの結婚話が進んで、それでもお山同士の婚姻だからいろいろと手配があり、ひと月の間に輿入れの準備をすることになった。

 と言っても、私には事後報告ばかりで、彼からはラブレターも届かない。


「紅山の近くでまた戦いが起こっているそうですよ」

 フレディが心配そうな顔をする。


「争いの多い地なの? 聞いてないわ、ねぇリンネット?」

 エリー姉様が心配なのは紅山ではなくそこへ嫁ぐ私だ。


「領土を広げましたからね。でもあの方が王に君臨してから負けなしです」

「勝っても負けなくてもいいから戦のないところがいいに決まってるじゃない」

 地形のおかげで蒼山は狙われることが少ない。王宮は自然の要塞に守られ、民たちが暮らす平野部分も果てしなく平らで敵が侵入しづらいらしい。だから私たちが生まれてから戦は起こっていないのだ。


「フレディ、王様なのにあの人は戦いに出るの?」

 私は聞いた。蒼山だったら父様ではなく兵隊さんが戦地に赴くと思う。


「はい。そうやって王になられた方ですから」

「怖い怖い」

 エリー姉様と入れ違いで、サイカ姉様がやって来た。

「ではお姉様方おやすみなさい」

「おやすみ、フレディ」


 結婚までの間、フレディ以外の誰かしらが私の部屋で眠った。

「小さいときはみんなで寝たわね」

 サイカ姉様だけはいつも自分の枕を持って来る。


「はい。暑い日は氷を部屋に置いて冷やしてみんなで寝ましたね」

「覚えてるわ」

「ねぇ姉様、結婚してからあの人が怖い人だと思ったらどうしましょ?」

 実際に会ってしまえばいい人なのに、離れているから悪い想像ばかりしてしまう。世の中には妻を虐げる男の人もいるらしい。


「そのときは戻ってきたらいいわ。お手紙を頂戴ね、リンネット」

「はい」

 心配なことはたくさんある。姉様たちと違って私は蒼山から出たこともないし、この王宮以外で眠ったことすらないのだもの。

 他の国のトイレは? 毒のある蜘蛛はいるのかしら? ヘビは苦手よ。

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