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話し方も見た目と違って優しい。声のせいかしら。ちっとも高圧的じゃない。
「のどかな場所ですね」
と山に目を向ける。
「紅山は違うのですか?」
「緑が茂るのは夏だけです」
「私、この足で大丈夫でしょうか?」
寒いと足の付け根が痛むときがある。
「うちの温泉に入ったらよくなるかも」
「期待しちゃう」
なんだろう。初めて話すのに、フレディのように接してしまう。
あんなに怖かったのに、今はこの人ともっと話がしたい。
「姫様からたくさん質問があると聞いていたので、緊張しています」
と深く息を吐いた。
「私もです。あ、そのお菓子はどうですか? サイカ姉様と作ったの」
「あなたが?」
「はい。この歪のなんて、絶対に私」
それを口に運んでくださった。パクっと一口。
「うまい。こんなにおいしい焼き菓子は初めてだ」
緊張していたのに、彼が笑うから私も笑う。
「中はジャムだったり、ナッツだったりします」
「木の実は好きです」
よかった。私もだ。
「あなたの従者にもあげたいのですが」
「うちは家臣と食事は一緒にしません」
「そうですか」
「ですので、あとで姫様から渡していただけると助かります」
「はい」
私のうしろから人の気配がする。紅山の王が気づいて木の棒を向けるとベルダ姉様とフレディがいた。父様まで。
「王のおなーりー」
咄嗟に宰相が叫ぶ。
「失礼いたしました」
と立ち上がると、やっぱりすごく背が高い。
「よいよい。散歩の途中じゃ。これお前たち、行くぞ」
心配で見に来てくださったのだろう。去り際にベルダ姉様が目配せをした。
大丈夫です、今のところは。
「すいません」
と私は謝罪した。
「ご家族の仲もよろしいようで」
「そちらは?」
「家族はいません」
この人、寂しい人なのかもしれない。
「それは寂しいですね」
「戦ばかりで、寂しいと思うこともありませんでした。お、小さい馬がいる」
「私の馬です。マーヤは私と共に育ちました。ひと回り小さいのはその子どものエンカです」
彼が指笛をすると二頭がこちらに駆けてきた。
「すごい。どうやるのですか?」
「あとで教えます。ほら、どうどう」
馬の扱いにも慣れているらしい。マーヤもエンカも彼に撫でてほしくて顔をすりすり。私にもそんなことしないのに。
「もう懐いていらっしゃいますね」
「ここを撫でると喜びますよ」
と鼻周辺をぐりぐり。私はいつもそっと頭を撫でていたけれど、馬たちはそういう撫で方を好むのね。
「嫁ぐ際、従者は不要だとのことですが、一人では不安なのでエンカを連れて行ってもいいですか?」
私は聞いた。
「もちろん。当領土内では羊の飼育が盛んです。うまいし毛は温かい」
「羊? 食べたことないですわ」
「うまいですよ。特に子羊は。他に必要なものがありましたら絶対に揃えさせます。出来得る限るこちらでの生活と変わらないよう配慮します」
なんだかもう、結婚する約束をしてしまったような気がする。




