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蒼山は平凡な山です。四季がはっきりしていて水も豊かで平和。それ以外は特徴のないお山です。
私は父様と三人の姉様、そして弟とそこに暮らしています。私は足が悪いので、乳母やメイドたちに助けを借りて生きている。
ここではお山ひとつに王が住み、国としてその中の民や集落をまとめている。私たちは自分たちが暮らす山をお山様と呼んで崇めます。
大きな島の上にポコポコとそれぞれのお山があって周囲を海が囲っているとそうだが、私は海を見たことがありません。暮らしぶりも山によって様々だと聞く。父様から地球は丸いと教わったけれど、私にはちっともそう思えない。
紅山は温泉が有名で、故に様々な交易も盛んなようです。
金山はその名の通り金が採掘されます。だからお金持ちらしい。
東の桃山では多種多様な花が咲いているそうです。
北の霧山は蒼山からは近く、晴れの日にはぼんやりと見えます。
他にも私の知っているお山はいくつかあって、きっと姉様たちはどこかにお嫁に行くのだろうとずっと思っていた。
なぜなら父様が王様で、私たちは姫だからです。私は生まれつき左足が悪く、右足だけなら立つことは可能だが歩けない。だから、私だけはここに残るのかもしれない。20歳にもなったというのに色恋沙汰ゼロ。