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「君が招き入れたのか?」
部長が桜木に尋ねる。
血走った目に、桜木は怯んでしまった。
「い、え」
自分も殴り殺される。
その恐怖で、脚が震えた。
横柄な態度の警察官が臆することなく部長に近づき、落ち着いた発声で話しているのを見て、やっと身体の硬直が溶け、ベンチに腰を落とすことができた。
『純粋な人間では無かったようですね』
蒼月が言った。
『見誤るとは』
不覚、といった様子だった。
黄色い水溜りに半身の潰れた人間が寝転がっている。
破れた水袋のような人体。
体内には、機械仕掛けの部品らしきものが見えている。
波型の歯車が微かに動いている。
一方向にしか回らない、かえしがついた形状で、突起を越えるたび、ギリコギリコと耳障りな音が鳴った。
「署でお話を伺います。よろしいですね」
顔を上げると、先ほどの警察官が黒い目を桜木に向けて立っていた。
「はい」
立ち上がると、気分が悪かったことを思い出した。
その場で勢いよく、床に吐瀉物をぶちまけた。