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首の域  作者: しめさば
6/9

5

「リジェクトの操作方法は?」

『力ずくで』

「そんな馬鹿な」

 桜木は暴れる学生を押さえつける。

 皮膚の下に硬いものを認めると、意を決して爪を立て、その部分を抉った。

 桜木の手の中が赤く光る。

 鮮血ーー。


 のように見えたが、そうではない。

 出血はなく、それは赤いチップだった。

 茜7号、金崎桐人の(ネック)


 学生が途端に静かになって、周囲の注目がにわかに増した。

 擬似皮膚の抉れた部分が、血は出ていないが痛々しい。

「落ち着いて、大丈夫ですか?」

 桜木が問いかける。

 しかし、学生は首を傾げている。

「ササザキさん?」

「……」

 何か話そうとしているが、言葉が出ない様子だった。

 (ネック)がなければ、話もできないか。

 警備員が、背後から近づいてくる。

「おさまりましたか?」

 手元を見られないように体で遮りながら、桜木は素早く、学生の首に新たなチップを装着した。

「蒼月、彼女の自律をサポート」

『はい、通信を試みます』


 桜木は振り返り警備員に言った。

「念のため警察に連絡をお願いします」

 警備員は頷き、こめかみに手を当てた。


「私は罪に問われる?」

 桜木は蒼月に尋ねた。

『複数人の記憶データを開示すれば、正当防衛が立証されます。私の助言のログも役立つでしょう。彼女の(ネック)から発信された電波の異常値も記録しています』

 桜木は自分のうなじに触れる。

 チップは剥き出しではなく、擬似皮膚に覆われている。

 自分の意思でなければ、特殊工具がないと自由に取り出せない。

 この皮膚カバーは、施工屋でいくらか金を払って取り付けられるオプションだった。

 安くはなかった。

 破壊した手前、弁償しなければいけないかもしれない。

 

 あんなに騒いでいた不審者は、キョロキョロと周囲を見回している。

「ここはどこですか?」

 学生のうなじには、青いチップが輝いている。

 白い文字で「3」と刻印がされていた。

「あなたが訪ねてきたんですよ、覚えていないんですか?」

 それは桜木が、生後3ヶ月の娘のために買った最新型だった。

 妻に返品して来いと言われたが、踏ん切りが付かず、今まで隠し持っていたのだ。

 学生がそれを首につけたまま、持ち逃げするのだけは阻止しなければならない。

「私が? はて……」

 ゆっくりとした動作だが、わざとらしく頭に指を当てている。

「君は、誰?」

 桜木が尋ねる。

「メイです」

 学生はスイッチが入ったかのように、一瞬だけハキハキと名乗った。

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