閑話 鳥と竜の翼の違い
カタリナ
「鳥人族って、腕がないんだね」
ハープ
「あるわよ。あるっていこうか、これが腕だわ」
ハープは翼をぱたぱたと羽ばたかせる。
カタリナ
「うーん? でもヴァイスは、腕とは別に翼があるよね? なんで?」
ヴァイス
「竜人族は、体の構造が竜に近い種族で、鳥人族は鳥に近い種族なんですよ。鳥や鳥人は、人間でいう腕にあたる部位が、飛行の術式を形成することによって飛ぶようになった動物ですが、代わりに指がなくなってしまったわけです。一方、竜や竜人は、肩の骨が肥大化して飛行の術式を形成した結果、飛べるようになったわけですので、それとは別に腕が残っていて、ある程度器用に道具をつかうことができるわけですね。しかし当然、体の構造と骨の数的に、鳥などの方が竜などよりもうまく飛べますよ」
ハープ、胸を張って自慢げ。
カタリナ
「へー面白いな」
ハープ
「空なら私たち鳥人に勝るものはいないわ!」
ヴァイス
「でも、純人族が追尾系の魔法を開発、発展させると、鳥人族は狩りつくされて絶滅寸前まで追いやられちゃったんです。いくら空を自由に飛べても、字も書けないわ、防衛設備も作れないわ、複雑な術式も構築できないわで、発展性がなかったんですよ、鳥人族は」
ハープ
「そんなことないわ! 確かに、特殊な肉体改造を施さないと、純人みたいに器用なことはできないけど……」
ヴァイス
「戦いも、この脳筋が例外なだけで、他の鳥人族はへなちょこですしね」
ハープ
「誰が脳筋よ!」
ヴァイス
「戦いしか取り柄のないお馬鹿ちゃんですからね、ハープは」
ハープ
「意地悪すんな!」
ヴァイス
「事実を言ってるだけじゃないですか。あはは」
カタリナ、やれやれと肩をすくめた。
少し時間が経ってから。
エア
「でも、ヴァイスちゃんなんで翼いつも隠してるの?」
ヴァイス
「竜人族の翼はあんまり見栄えが良くないんですよ。性能も微妙ですし。正直なくてもいいんですよね」
ヴァイスは背中についた服の隙間から、翼を出す。それは蝙蝠の羽のように薄っぺらく、しかも骨格が単純すぎて、本当にその翼で体を浮かせられるのか疑問に思うようなアンバランスなものだった。
ヴァイス
「千年以上前はもうちょっと立派だったらしいんですけど、魔法の発展で使う機会が減って、退化しちゃってるらしいです」
カタリナ
「正直、ハープの翼を見て羨ましいとか思ったりする?」
ヴァイス
「ちょっと思いますね。綺麗ですし、有用ですし」