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閑話 彼岸の戦力

 三人で行く旅がはじまってすぐ、カタリナは最近ずっと気になっていたことをヴァイスにたずねた。

「ねぇヴァイス。彼岸のメンバーで、誰が一番強いの? やっぱりイグニス?」

 ヴァイスは、思い出すように視線を斜め上にあげて唸る。

「えっとですね。強さの基準がけっこう難しいですけど、一対一でなら、決闘オタクの人が彼岸の中にいて、その人がランキングみたいなの作って遊んでいるんですよ。その順位でよければ説明できますが」

「それでいいよ。でも決闘オタクってどんなやつ?」

「赤獅子のレオってわかります?」

 カタリナは思わずふふっと笑ってしまった。顔なじみだったからだ。

「あいつ、彼岸に入ってたんだ」

「あ、お知り合いですか」

 赤獅子のレオは、最高位の冒険者にして、カタリナが冒険者になって初めて出会ったノワール以外の不老者でもあった。

 きわめてすぐれた近接戦闘技術を有し、遠距離で発動する魔法や高度な術式はほとんど使わない、典型的な戦士であり、その性格もかなり野蛮かつ乱暴で、気に入らないことがあるとすぐに決闘で決着をつけようとする。

 というか、気に入らないことがなくても、暇つぶしで決闘をしかけてくる、厄介なやつだった。カタリナ自身、何度か彼にのされたことがある。一応、一度だけ勝ったこともある。

 五年ほど前からユーリア大陸に姿を見せなくなっていたが、いつの間にか中央大陸に渡っていたようだ。

「めんどくさいでしょ、あいつ」

「ですね。あの人、新しい戦法考えたとか言って、毎度私をぼこぼこにするんですよね。正直苦手なんで、避けてるんです」

「まぁでも、あいつは人の実力を見極める目は持ってるから、そのランキングはけっこう信頼できるかもね。で、一位は?」

「レオさん曰く、圧倒的なのは、帝国出身の魔術師、ミリネさんですね。今は確か、パレルモ沖にあるウスティカ島の魔法学園都市で教授職をしてるみたいですが、昔は唯一帝陛下の側近を務めていたこともあるくらい、すごい人です」

「知らない人だな。二位は?」

「イグニスさんですね。このふたりには、レオさん逆立ちしても勝てないらしいです」

「三位は?」

「レオさん自身だそうですが、これはけっこうたくさんの人が反論してます。レオさん、負け越してる相手結構いますし。なんか、相性が―とか、手加減してるから―とか、色々理由つけて自分を三位に置くあたり、らしいなぁって感じですね」

「そこからは?」

「彼岸って、けっこう戦闘力は横並びなんですよね。相性もありますし。聞くたびに順位入れ替わってますけど、前見たのだと、四位が鳥人属の英雄ハープさん、五位、デブ紳士のダフヌさん、六位、我らが盟主ザルスシュトラさん、その次にイグニスさんラブな高位魔術師ノロイさん、八位が、カタリナさんが前に倒したシグさんですね。この辺までは、レオさんといい勝負してるみたいです」

「レオに勝てそうなのはそれだけ?」

「私が知る限りそれくらいだと思います」

「なるほど」

 善悪の彼岸の戦力は、ひとつのグループが持つには強大すぎるが、ギルドと正面からぶつかって何とかなるレベルではないとカタリナは判断した。カタリナは、ギルドの最高位冒険者たち全体でみると、おそらく中の上か上の下程度の実力しかない。レオ自身が、ギルド所属の冒険者の中ではかなり名の知れた実力者であるのは確かだが、彼より強いとされる者は、両手の指に収まらないほど存在する。

「それで、その後ろあたりに私が来ます。けっこう戦闘が苦手な人多いんですよね、彼岸って」

「そもそも彼岸ってどれくらいメンバーがいるの」

「さぁよくわからないです。ただ、大きな都市で会合を開くと、毎度三十人以上は集まってますね。いつも半分以上知らない顔ですし、割と普通の人も興味本位で紛れてたりするみたいです。本当に重要な話は主要メンバーだけで集まってやるんで、あれですけど」

「けっこう適当なんだ」

「ま、自由人が多いんで、縛りが緩いからこそ成り立っているんでしょうね」

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