序章
積み重なった〝戦時中〟という時間は、人の心を鈍らせ、変質させてしまうには十分すぎる時間であった。
二〇一〇年代に始まったウイルスの流行に伴い、各国の情勢は悪化。自由が無くなり、人々は今までの生活を一変させることで安楽を求めたが、二〇二〇年代初頭、超過激派勢力により主要都市にてテロが勃発。後にこれが国家絡みの計画的犯行で会ったことが明らかになったことで、貿易戦争へと繋がった。
これにより、世界情勢はさらなる悪化の一途を辿ることとなり、人口が未発展の国からジョジョにその数を減らしていき、二〇三〇年には最高時の半分ほどにまで激減。少子高齢化は皮肉にも改善されていったが、国は縮小の道を歩み続けた。
二〇三〇年代中頃にはほとんど国が保守的な立ち位置を取るようになっていき、国と国の繋がりは疑心暗鬼によりほど消失したと言っても過言ではなかっただろう。結果として、均衡の時代、鎖国の時代と後に語られる静かな時代が幕開けた。
渡航というものがなくなり、協力関係もなくなり、都市からは外国人という存在自体が完全に消え去った時代。母国語以外の言葉を聞くことはなく、自国のみを愛した時代。
それはもしかすると、
「今の時代よりも、遥かに豊かで、綺麗だったのかもしれない」
疑心暗鬼という呪いではなく、互いが互いを見つめなおすための時代。その時代をもっと大切にしていれば、この世界は遥かにいい世界になっていたのかもしれない。
もしも、の話などしたとこで無意味だとは十分に理解している。しかし、それでももしもを語らなければこの世界は生きていきにはあまりにも地獄であった。
緑は消え失せ、焦土と化した土地に、舞い降りる天使たち。
〝戦時中〟という時間のせいで、祝福されてしまった殺戮を生むためだけの天使たち。殺戮を禁忌とは教えられず、それこそが成すべきことであり、存在価値であると云われた悲しき存在。
教育という洗脳で侵され、歪ませられ、そこにいる。
無垢であるはずの、祝福されて生まれてきた存在。
欠損を、天使の羽に変えられた兵器たち。
これは、天使が世界を滅ぼすまでの物語である。