探偵の助手をしていたぼくが地獄の獄卒になった理由 二章
第2章 下界
いきなり「鳥の声」を聞いた
気付くと何処かのビルの屋上に降りていた。
下は沢山の人と車。空は地獄では見れない青空がどこまでも続いていた。
空気がうまい!
生前では感じなかった感覚。
久しぶりの人間界。
でも、ぼくには人間だったときの記憶は無いに等しい。
さて、何から手を打つか?
調査資料には❬記憶玉を完成させるために必要な物は?自殺者のみ自殺の記憶は何故残るか?❭
❬地獄に即行きになる人間の特徴❭
この二つしかなかった
それからケースよりぼくの人間界での名前を入手。
[セト シュウジ 25歳]
違和感と懐かしさを感じた。
ご丁寧に年齢まで。
まあ、人間界で名無しは不便だ。有り難く使用させてもらおうか。
そうと決まれば、まず宿を取らないと。
遅くまで調査で野宿は勘弁だ。
屋上から出ると宿泊先を探すことにした。
一軒のビジネスホテル。
フロントの男性に声をかける。
「あの。しばらく滞在したいのですが部屋はありますか?」
物腰の柔らかい中年のフロントマンが、顧客名簿に目を通す。
「シングルでしたら、1つ空いてます。」
「では、お金は先に払いますので、1ヶ月お願いできますか?」
「ええ!!1ヶ月ですか?」
優しげな顔が困惑顔になる。
無理もない。学生だか社会人だか年齢不詳な男が1ヶ月も部屋を貸せだとか、正気には見えないだろう。
「はい。1ヶ月です。」堂々と言うぼくに、フロントマンは戸惑いながらも「承知いたしました。では、こちらがこの部屋の1ヶ月分の料金になります。」
うんうんと頷くとフロントマンがまっさらな用紙を差し出す。
「お客様のお名前と電話番号をこちらにお願いします」
ペンを手にする。電話番号は地獄から借りたスマホ番号を、そして名前の記入で不思議なことが起こった。
❬瀬戸 修二❭
気付くと漢字で書いていた。
「えっ?」ぼくは口の中で呟いてしまった。
色々と漢字は充てれたはず、なのにこんなに迷い無くこの四文字が頭に浮かび、すらすらと書いていたのだ。
考えても仕方ない。
ぼくは涼しい顔をして料金を払う。(お札を出してる時にフロントマンが目を白黒させていて、吹きそうになった)
カード型の鍵を受け取り
5階の部屋に向かう。
[512]カードの番号と部屋のドアを確認、差し込むとドアが開く
滑り込むと施錠をしっかりし(万が一があるといけないから)
久しぶりの人間界の服は肩が凝る
帽子を脱ぎ、靴を脱ぐ。
「はあああああー」と寝転ぶ。
いつもは布団なのでベッドですら懐かしいような。
しかし...名前の記入の時の。
何故漢字がすらすらと出たんだ?
残念ながら自殺以外の記憶は無い。ぼくの生前の名は記憶から抹消され新たに地獄の住人としての名は与えられている。
ぼくは地獄では[禅斗 ぜんと]として名を発している。
以外に気に入っている。
名付けは菊さんだ。ネーミングセンスはなかなかである。
ついでに言うと、ぼくはスカウトされて獄卒になっていない。
ぼくは[自ら志願して獄卒になったもと人間(亡者)]
だから周りが最短で獄卒になったと言うのは、そう言うこと。
何故志願したのかは、クドイようだが覚えてない。
ぼくはその時[何かを成し遂げないとならない様な顔]をしていたらしい(先輩獄卒談)
まあ、考えても答えはでない。
下界の空気は身体に負担がかかる。
「***さん!な.....です?どう.....で...すか?」
ん?夢?
「**君、し.....ないさ。行き.....く為だよ」
頭の中なのかわからないが[声]だけが流れてくるうっすらだが姿も見える。
2人組の男性?の声が響く
内容はわからない。
一人の声は聞いたことがある。
あるのだが名前が浮かばない
やがて背の高い男性の顔だけわかる。傷がある。
背の高い顔に傷がある男性は
若い男性に背を向け去っていく
若い男性は追いかける。
場面が変わった。
ビルの屋上らしい場所。
若い男が膝をついている。
肩が震えてる、泣いているのだろうか?
「どうして......どうしてですか?し、師匠。」
若い男性は絞り出すように呟いた。
目が覚めた。
[夢]だったらしい。
に、してもリアルだ。
それに、あの光景を見たことがあるような気がする。
ドラマ?芝居?
駄目だ、わからない。
まだ来たばかりで眠ってしまった。長らく地獄の生活に慣れてしまったからなのか。
まだ午後に差し掛かったばかり
僕は服を整え調査に出ることにした。
とは言え
この調査すべき内容、ざっくりしすぎだ。
二番目はなんとかなりそうだ。
なんせ下界には対象者❬人間❭がゴロゴロいるわけだから。
問題は1番目。
記憶玉に何を足せばなんて、ぼくの方が知りたい。
一応、記憶玉に何が入ってるかは閻魔様直伝の調合法が丁寧にあるが、どれもなかなか下界では見ないものばかり。
これに何を混ぜればなんて。
ぼくはため息しかでなかった。
まあ、1番目から片付けよう
1ヶ月もいるのだから、ゆっくりと探せばいい。
1番目は2週間、じっくりと時間をかけ報告出来た。
即で地獄にいく人間は[自殺、殺人、自殺に追い詰めた者]が主だ。
それ以外は特に裁く段階で天国行きに変わる可能性があるので、特に重きは置いてない。
菊さんは嘆いていた
「何千、何億年過ぎようと人間が皆、善人に変わることはないのだろう」
全く同感だ。自殺したぼくも何らかの原因で傷付き、自らを殺す結果のもとこんな調査をしてるのだから。
さて、後はもうひとつ
[記憶玉に何が足りてないのか?]だ。
菊さんが閻魔より聞いたところ
あと1つだけなにかが足りないらしい。
地獄にあるものは片っ端から試したが、どれも効果が出ず、逆に一時は記憶の改竄まで起きてパニックになる事例もあったのだと。
ゾーーーーォっとした。
ぼくに使ってないだろうか?
鏡の通信越しに不安が伝わったのか(笑)
菊さんから「禅斗さん。」と呼ばれる。ハッとすると彼女は落ち着かせるようにゆっくりと「貴方に使用した記憶玉はキチン直されたものですから。」と。
ホッとした。よかった~。
「安心されたところで、探していただきたいものがあります。」
「なんでしょうか?」
「実はあれから忙しい間を縫い、私独自でも記憶玉について色々と調査はしてました」
「え?でもこの資料だと」
「はい。なかなか結果が出ず苦戦ばかりで。でも、ようやく足りないものがわかりました。正しくは、貴方にはあるものを探して来ていただきたいのです」
「わかったんですか?じゃあ、ぼくが下界に来た意味は?」
混乱しそうになりながらもぼくは尋ねた。
「いえ、意味がないわけではなく下界にしかないものとわかったんです。だから禅斗さんに下界に行っていただきました」
「そうだったんですね。」
ようやく理解した。
「しかし、見つけられるのは五分五分ですよ。何せ下界の辞典にすら載ってないのですから。」
「あの。そんな難しいの本当に下界にしかないのですか?」
「はい。間違いなく。」ハッキリとした口調の菊さん
「今から三日後。ちょうど満月になります。それまでにある場所に行ってください。」
「わかりました。でも、何処に?」
「〇〇〇です」
「えーーーー!」ぼくは開いた口が塞がらなかった。




