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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ぶらまもり

作者: 空仰 石

 某城、にぎやかな酒宴場から少し離れた場所。


「本当に行くのか? リモー」


「ああ、マンサー。魔王を倒して目的を果たしたわけだしここにいる必要はないだろ?」


 昨日魔王を倒し、今日はその祝勝会。途中で抜けようとしたところ一緒に戦った仲間に捕まった。彼はマンサー、強力な魔法を使う魔術師だ。


「シキに言わないのかい?」


「断られるに決まってる。話しでは勝てないしな」


 シキ。女勇者。


「ハハハ、いつも言いくるめられていたな」


 俺、彼女、マンサーで魔王を討伐。この世界は平和に。


「ま、こうなるんじゃないかと思って用意しておいた。コイツを持っていけ」


 結構な額のお金を貰った。


「準備が良いな」


「お前はわかりやすいんだ。真面目だしな。そこが心配ではあるんだが」


 心配性のマンサー。男だけどよくマンサーママとシキに冷やかされていたっけ。


「まずはギルドに行って冒険者になっとけ」


「すでに冒険者になってるけど?」


「リモーの名前で冒険者やってたら色々と問題が起こるだろ」


「新しく作るんだ。偽名でな。なーに、ギルドのシステムは穴だらけだから全く気づかれないよ」


「お前が言うのなら大丈夫なんだろうけど、結構適当なんだな、ギルドって」


「人手不足だからな。なんだかんだで命がけだし」


「それからその防具も外しておいたほうが良いな。冒険初心者がそんな強そうなもの身につけてるのはおかしい」


「たしかに」


「それから――」


 おっと、始まってしまったか。悪いやつじゃないんだが話が長い。まあ今日で最後かもしれない。彼の気が済むまで付き合ってやるか。


「ハンカチは持った?」


「持ったよ」


「そんなところかな」


「いつもありがとう」


「かまわないさ」


「じゃあいくぜ」


「元気でな」


 手をふる彼を背に、俺は城を後にした。

 3日後。適当な街に寄り、偽名を使って冒険者となった。武器防具は大容量の道具袋マジックパックにいれてある。コイツは便利な道具袋で広げると宇宙のような不思議な空間が広がっており、そこにアイテムを入れるとアイテムがどこかに飛ばされ保管されているというマジックアイテム。実質道具袋を持ち歩いているだけと非常に便利な代物だ。


「依頼をいくつかやるか」


 依頼を受けこなした。


「モズさんですね。少々お待ちを。はい、依頼達成です、お疲れさまでした。こちらがその報酬となります」


 いくらか入ったお金を手に入れる。


「ありがとう」


 お金を稼げた。これでなんとか生きていけるな。今後は旅をしながら気楽に生きていこうと考えていた。


「んー、目標なんかがあったほうがいいかな」


 そうだ。これからよる街や村の良いところを一つ見つける、うん、とりあえずこれを実践していこう。


「ただ旅をするよりも楽しくなれば、という思いで」


 ま、これは気分次第で変えたりするだろうけど。その後適当な店で晩ご飯。


「串焼きか」


 いくつか頼む。うまい、お酒も進む。


「ふむ、この街は串焼きの街、かな。いやまだ他にも店があるしそう決めるのははやいか」


 それから二週間、この街を出発。馬車に揺られながらのんびり旅をしていた。


「おんやぁ、あれは」


「魔気雲だな」


 魔気雲。強力な魔物、魔王の部下の魔人が現れたときに出現する雲。


「向かっている街の近くですね。行くのをやめましょう」


「そうだな。危うきに近よからずだ」


「俺はここまででいい」


「お客さん? 魔王は倒されたがまだまだ強い魔物、魔人はいっぱいいる。ちょっと暗い腕に自身があるくらいならやめておいたほうがいい」


「大丈夫だ」


「そうですか」


 御者は渋々俺を下ろす。まあそうだろうな、ぱっと見布の服を着ているだけだし。


「御武運を」


 馬車は来た道を戻っていった。


「さて、向かうか」


 魔気雲が出ているところまで走って向かった。

 しばらく走り現場が見えてきた。多数の冒険者と魔物たちが戦っている。どうも冒険者側が押されているようだ。急がねば。


「撤退! 撤退!」


「城壁があるところまで下がれ!」


 武器防具を身につけ参戦。


「微力ながらこのリモー、殿を受けよう」


「む、無理だ、そんな事考えずに逃げ……ってリモー!? あのリモーか!」


「そうだ」


「そうか。なら頼む!」


 かなりの数だが単体の強さはそこまで強くはないな。一気に片付けるか。


「んー、魔物がほとんど来なくなったな? どういうことだ」


「リモーが来たらしい」


「あの勇者パーティで盾役だっけか。そこまで強いのか?」


「そうか、お前は田舎にいて最近冒険者になったばっかりだったな。知らなくて当然か」


「強いってものじゃない。皆が口々に言う、アイツ1人で良いんじゃないかってな」


「ゴクッ、おやっさんがそこまで言うなんて」


「勇者と魔術師も弱いわけじゃない。それこそ俺達が束になってかかっても勝てないだろう」


「だがあいつは格が違う」


「魔王も最初勇者と間違えて非常に気まずかったらしい」


「そいつは気まずいっすね」


「そして大鎌、大盾を携え魔王を瞬殺したそうだ」


「うへぇ……」


 大鎌を使い魔物たちを切り刻む。


「1000匹くらい倒したかな。だが魔気雲はまだある。大物がいるようだ」


 ほどなくして魔物たちの後方から大きな魔物、三つ首のドラゴンが姿をあらわす。


「スリーヘッドドラゴン。大物だな」


「スリーヘッドドラゴン! この街を捨てるぞ!」


 後方で大騒ぎ。確かにコイツなら街一つ軽く破壊するだろう。


「そんなにやばいやつなの?」


「ヤバイなんてものじゃない。凄まじい破壊力を持っている。そしてやつの本当のヤバさはその再生能力にある。首を一、二本切り落としても、一本でも残っていれば瞬時に首が復活する」


「じゃあ倒すにはああやって首を同時にぶった切るしか無いわけか」


「ん? そうだ、ああやって首を同時に……。落ちてる!」


 大鎌で一閃、三つの首を刈り落とした。


「魔気雲が消えた。残った魔物も逃げていく。こんなところか」


「うおー!」


「すげー!」


 街の方から歓声が上がる。喜んでもらえるのは嬉しいところだが俺は静かに暮らしたい。あの街には寄らずにそのまま旅を続けるかな。

 俺は軽く手を振るとその場から去った。




「それでマンサー。リモーの自由にさせたと」


「そうだシキ。あいつはたしかに強いが世間知らずなところがあったからな。一人で社会勉強をさせたほうが今後のためにもなるだろうと思ってな。ああ、でも悪いやつに騙されてないだろうか……」


(そんなに心配ならついていけばよかったのに)


(まあ、私は行くけどね)


「ハァー。リモーもシキも考えてることが顔に出るんだよ」


「マジ?」


「行ってもいいけど、コースター用のハンカチも持っていくと良い。女子力を見せてやれ」


「わかったわ、マンサーママ」

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