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粒をならべていく阿弥羅 7
「私がこうして、ゆびで空間を漉くと、ほら」
浮遊する音が少女のゆびに絡み、うつくしい真珠として実を結んでいきます。
青濘は、はからずも其れに見惚れました。なんということ。此れから食べようとしている対象に美質をみとめるとは。これじゃあ、喰えなくなるじゃあないか。心中、ひとりごちる鰐でした。
「この様に真珠が創出されますけれども、だけれど無から有に転じているわけではないのよ。
実はね、私はこの行為に耽り乍、『影』が滅していくのをつよく感覚しているのだわ。
影は、『負』とも言えるかしら。
つまり『正』、在るということの裏っかわに位置する熱量なのだわ。
また『影の増減』『負の増減』の様なことを意識しない存在体はいないのですよ。
この白野、にはね」
白野、という語句にひとしおの力が籠もったために、それはひときわ大粒の真珠結晶と化したんです。