粒をならべていく阿弥羅 6
「理屈の根本は簡単なことです。なにかを構築するためにはなにかを破壊しなくてはならない。
うんうん、これは明快なお話ですよね。お家を建てるためには木を伐らなくてはならない。それから採石したり、その石を砕いたりしないとなりません。火を使って煉瓦をやいたり。またお家には衣服や、靴や、防水布だって必要だわね。其れにもちいる皮革は、いきものを殺めないと得られないわね。
其れら伐ったり、矯めたり、削ったり、灼いたりの積み重ねがお家でしょう。
もっとも至極ですわね。簡単なこと。
私たち存在体の体を作るのも、お家づくりと一緒。同じことよね。
栄養素を体内にとり込むためには、他個体の破片や組織を搾取しなくてはならない。
だから青濘、あなたも私を食べようとしている。こうして。
ご自分の体を保全するためにね。
凍て野でならば、此の単純な原理にしたがっていたらば良いでしょう。事実、そうしてきたでしょうからこそ、なんのお考えも無しに私を殺そうとしているんでしょうね。
けれども。
『反動』という働きをご存じかしら。
私が真珠を形象する源も『反動』、私が今、此処に『在る』という源もまた『反動』の結実なのですよ」