第1話 2000年後の君へ
今は昔竹取の翁といふものありけり。
野山にまじりて、竹をとりつゝ、萬の事につかひけり。
名をば讃岐造麿となんいひける。
その竹の中に、本光る竹ひとすぢありけり。
怪しがりて寄りて見るに、筒の中ひかりたり。
それを見れば、三寸ばかりなる人いと美しうて居たり。
翁いふやう、
「われ朝ごと夕ごとに見る、竹の中におはするにて知りぬ、子になり給ふべき人なンめり。」
とて、手にうち入れて家にもてきぬ。
妻の嫗にあづけて養はす。
美しきこと限なし。
いと幼ければ籠に入れて養ふ。
竹取の翁この子を見つけて後に、竹をとるに、節をへだてゝよ毎に、金ある竹を見つくること重りぬ。
かくて翁やう豐になりゆく。
この兒養ふほどに、すくと大になりまさる。
三月ばかりになる程に、よきほどなる人になりぬれば、髪上などさだして、髪上せさせ裳着もぎす。
帳ちやうの内よりも出さず、いつきかしづき養ふほどに、この兒のかたち清けうらなること世になく、家の内は暗き處なく光滿ちたり。
翁心地あしく苦しき時も、この子を見れば苦しき事も止みぬ。腹だたしきことも慰みけり
。翁竹をとること久しくなりぬ。
勢猛の者になりにけり。
この子いと大になりぬれば、名をば三室戸齋部秋田を呼びてつけさす。秋田なよ竹のかぐや姫とつけつ。
このほど三日うちあげ遊ぶ。
萬の遊をぞしける。
男女をとこをうなきらはず呼び集へて、いとかしこくあそぶ。