運命
「ひだまり童話館」『もじゃもじゃな話』参加作品
赤い糸。それは運命の人との印。でも誰にも見えない。
と思っているのがほとんどの人。確かに見えないのだから当然だろう。
しかし、時々見える人がいる。その人たちは運命の赤い糸を探して、運命の出会いに繋げる人。
祐司もその一人。赤い糸をたどって、少しずつ糸を短くしていく。それは二人の出会いを早くするため。
今日も祐司は赤い糸を見つけると、短くしていった。と、そこで目についたのが、絡み合った糸。
「なんだ、これ!?」
思わず声を出してしまい、通行人に変な目で見られる祐司。しかし祐司が見たのは、もじゃもじゃに絡まった糸。これはほぐすのが大変だ。早くほぐさないと、運命の人と出会うのが遅くなってしまう。
祐司は少しずつ糸をほぐし始めた。が、余計にもじゃもじゃとしていくだけ。
祐司の心は折れそうになった。そこへやって来たのは祐司の友達の明。明も赤い糸が見える一人だ。
「祐司、どうした?」
「これ見てくれよ」
「なんだ、これ!?」
祐司と同じことを叫ぶ明。
二人は顔を見合せ、うなずきあった。これを見たからには、なんとかしなければ!二人は糸をほどき始めた。少しずつ。少しずつ。もじゃもじゃだった糸は、なんとかもじゃ程度にはなった。あと少し。二人は頑張った。すると、その糸は祐司についていた。そしてその先は……明。
「「なんだ、これ!?」」
またしても二人の声が重なる。
実は、友情でも糸が繋がっていることがある。その場合、糸がもじゃもじゃでも、既に出会っていることが多い。二人は友情で固く結ばれていたのである。
「あはははは!これからもよろしくな!」
「おう!」
二人は意気投合。これからも二人は一緒に糸をほどき続けるでしょう。