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空気の読める男子高校生

 穴があったら入りたい。入らなくても、少しでも痛い視線を浴びないで済むならなんでもいい。なんでもよかったから、ハンカチを広げて匠との間に目隠しを作って抵抗してみたりした。


「ご、ごめんなさい。私、横井 遼乃と申します。榴くんにはお世話になっています」


「お世話、って……」


「あああいえ違うんです、お財布拾ってもらって、ただそれだけなの! いかがわしいことは、何もないです!」


 椅子に座った匠に、榴が事情をある程度説明したみたいだった。この子がどんな子なのか、大変なことにならないかとか、色々なことが過ぎってテンパってしまって、場の様子に全然注意がいかなくて、わからなかったけれど。榴が彼を匠という友達だと紹介したことで、ただの知り合いレベルの子に疑われたわけではないことにだけ安堵する。


「あーえっと、横井さん? 別に疑ってないし、榴から話は聞いてるから。……制服着てるのだけ、ちょっとビビってるだけで」


 茶髪の明るい印象通り、笑って柔らかな雰囲気にしようとしてくれている。けれど、榴も全然喋らないし、遼乃の心臓は強く速く打っているままで、呼吸もままならなかった。


「……これ、お前の趣味?」


「は?」


「ごめんなさいコスプレで……」


 ハンカチのこちら側で項垂れる。絶妙にダサいと言っても、高校生の制服は制服だ。人によっては、そりゃあ、好きなんだろうとは思う。


「横井さん。俺、谷北で榴とは一番仲良いと思うし、まあ色々事情とか……多分わかるから、そんな風に隠れたりしなくていいって。第一、似合いすぎててホントに知らない女子とデートしてるのかと思った」


 一言余計だ! ますます恥ずかしくなって遂に額は机にくっつく。ハンカチもへろへろと崩れ落ちて、両拳を握るばかりだ。


「私、榴くんに大したお礼もできてなくて、それで、勉強とか、相談とか乗ろうと思って」


 ああ、それじゃあ制服を着ている言い訳にはならない。大体、とっくに大学も出ている大の大人が高校生のフリして出かけることにどうしてさほどの抵抗を覚えなかったのか。知り合いに会ったら、こんな風になることは目に見えていたのに。


「……俺が頼んだ」


「はぁ!?」


「大人の人とデートしてる方が問題だろ」


「いや、そうかもしれないけど、大人の人に制服着せてるのも問題だろ!」


 全くおっしゃる通りではあるけれど、かなりの割合で遼乃が悪いのも事実だ。ひたすら不審がる匠と、顔を合わせられる気がしない。


「あー、もう、それはいいや。俺には何も見えてません。それでいいでしょ? 横井さんも、とりあえず顔を上げてお話しましょうよ」


 諦めたような優しい声色に、恐る恐る顔を上げる。髪色はちょっと明るいけれどきっちりした雰囲気の匠は、改めて笑顔を作った。


「コイツこう見えて、こんな風にしょっちゅう変なことするから、あんまり付き合わない方がいいですよ。俺もさんざん……」


「匠」


 ふざけようとした匠の頭に榴の手のひらが覆い被さる。あからさまに機嫌の悪い瞳で一瞥すると、匠はにへら、と笑った。


「ま、こんな風に仲はホントにいいんで。このことはちゃんと秘密にするから、なんか困ったことあったら言ってくださいね。はいこれ、俺のLINE」


 目にも留まらぬ速さで飛び出てきた明るい色のスマホケース、そしてコードの画面に、現役高校生らしさを感じてくらりとする。たじたじしながらも、とりあえず差し出されたのでコードを登録してみる。


「いや、匠と何LINEすんだよ」


「えー? ほら、あるかもしれないじゃん。実はお前がストーカーで困ってるとか」


 今度は無言でネクタイを軽く引っ張る。榴は本気で怒ると怖そうだけど、こうやってきちんと意思表示をできる間柄は、サバサバした男子の付き合いの中でも、それなりの仲の良さを感じる。


「あ、あはは……。よろしくね、匠くん」


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