どいつもこいつも
メイは廊下の真ん中でうずくまった。
足がガクガクしてもう歩けない。
力一杯握った握りこぶしを唇に当てる。
キスしてしまった…
心が揺れている。
でもそれが許せないでいる。
私はどうしたら…どうしたら…
人を傷つけてばかりいてもなお我が儘を貫きたいと言う、曲げられない自分も許せない。
私は…どうしても答えられないの…
メイは涙を流しながら、ガタガタと震えていると後ろから声がした。
「メイ嬢?どうしたんだい?」
「ディル様…」
情けない姿を見られたくなくて逃げようとするが、足が動かない。
その状態を見たディルがメイをひょいと持ち上げた。
「…下ろしてください!」
「でも、動けないんだろう?恋人と喧嘩したの?」
「恋人ではありません!」
メイの首元を見たディルがメイに問いかける。
「なら無理矢理?」
「…」
「それはいけないね。」
「…私がいけないのです…リオン様の気持ちを知りつつも幼いからと侮ってしまったのです。」
「弄んでしまったのかい?」
「そのことすらわからなかったのです。」
「己の無知によって傷つけた、ということか。」
「はい…」
ディルは少し考えて、言った。
「謝って許されるなら謝って逃げるしかないかな。」
「それしかないのですか?」
「君は私のように開き直れないだろう?」
「でも…」
「手に負えないことには手を引くのが大人じゃないかな。」
「それじゃあ…」
「責任取れるの?責任を取れないなら首を突っ込んではいけないよ。」
メイは放心したようにディルの顔をジッと見たまま、ポロポロと涙を流した。
「そう…ですよね。私、逃げます。」
メイはディルの手から離れると全速力で走り去って行った。
家に帰ろう。そして閉じこもって、一生独りでいるの。
夕食を食べないメイを心配したロベルトがメイの部屋を訪ねる。
「メイ、大丈夫か?」
メイはロベルトの手を引いて、部屋に引き込んだ。
真っ赤な目でメイはロベルトを見つめる。
「私、結婚したくないの。もしそれが許されないなら修道院に行くわ。」
そう言うとメイは口をグッとつぐんで、ロベルトに目で訴えかけた。
「何で急に…」
「嫌になったの。好きだのなんだのに。私のことを好きになる人の気持ちも自分の気持ちも全くわからないの。」
「…少し早まり過ぎているけれど…誰とも会いたくないのなら遠ざけるから、修道院だけは考え直してくれ。」
ロベルトの言葉にメイは黙って頷いた。
安心したのか、メイはまたポロポロと涙を流す。
「どうしたら人を傷つけずにいられるか分かんないの…」
メイはロベルトにしがみつくように枝垂れがかった。
こうべを垂れたメイの首元にロベルトは気付いた。
「好きなだけ独りでいればいい。ただし、兄だけは側にいさせてくれ。他の男のようにはならないから。」
ロベルトはメイをきつく抱きしめた。




