三者面談
「メイ様、お久しぶりです。会えない日が長過ぎて大変寂しかったです。」
リオンはメイの顔を見るや否や飛びつくように抱きついた。
はじめはあんなに大人のように挨拶していたのに、今や形無しである。
本当はまだ子どもなのね。
メイは今のリオンを微笑ましく思っている。
ただ一つ、風紀が乱れている事を除いて。
「リオン様、私もお会いしたかったですわ。」
メイが挨拶すると、リオンはメイの指と自分指を絡ませた。
以前はそんな手の繋ぎ方などしなかったのに。
「あと、ご紹介したい方がおりますの。お兄様になっていただいた、ロベルト様です。」
それまで、ロベルトが横にいるにもかかわらず、無視するかのようにいちゃついていたリオンが止まった。
「ロベルト様、メイ様とお付き合いさせていただいています、クロスフォード家次男、リオンと申します。以後お見知り置きをお願します。」
リオンはロベルトに向かって飛びっきりの天使の笑顔を向けた。
「元レスター家次男のロベルトと申します。」
「お兄様、今はもうオリエッタ家の長男でしてよ!私たちと同じ名前を名乗ってほしいのですけど!…命令とかではないですが…」
「わかった。」
ロベルトが少しだけ微笑む。
最近、ロベルトの表情が柔らかくなり、メイやメイの両親も安堵している。
「約束を守っていただけたのですね。」
リオンが割り込む。
「今のところ計画通りですわ。」
「計画?」
ロベルトが不審そうにたずねる。
「私の独身計画ですわ。結婚などから離れて学問などを勉強したいのです。私はこの通りですから、少しでも自信をつけたいと思って…」
「…てっきり、お二人は恋人同士のかと…」
「はい。」
「違います!リオン様は最近イタズラが過ぎますよ!」
肯定するリオンと否定するメイで意見が割れる。
ロベルトはまたかと頭を抱えた。
「お二人とも節度を持ったお付き合いをするように。それでは私は席を外しますね。また様子を見に来ますから。」
睨みつけるリオンから逃げるようにロベルトは自分の部屋に戻っていった。
「やっと二人きりですね。」
リオンが可愛い笑顔をメイに向けた。
「リオン様は大変お忙しいそうでしたね。」
「本当に嫌になります。」
リオンは普段は学院の寄宿舎で生活しており、週末の貴重な時間でメイに会いに来ている。
「学校は諦めましたが、明日もせっかくの休みなのに兄上の補佐につかないといけないといけないのです。メイ様と一緒に居たいです。」
「私はリオン様のお仕事中のお姿を拝見してみたいですわ。」
「なんの面白みもありません。挨拶回りが主です。兄上が人見知りだからそのフォローみたいなものです。」
「あのシオン様が?ご挨拶の時はそうみえなかったのですが。」
「それが厄介なところで、私が居ると大丈夫なのです。だから、私の沢山の友人達が餌食になってしまいました。」
餌食…あの笑顔かしら。
確かにあの近寄りがたいシオン様が自分だけに笑顔を向けたと勘違いしてしまえば、恋に落ちる人は多いだろう。
「リオン様もおっしゃっていたことはこのことだったのですね。」
「しかも、私をダシにしようとするので厄介なのです。」
「うーん…私も何かお力になれればいいのですが…」
「それはダメです!」
「わかりました。」
「そんなことより、私はメイ様の話を聞きたいです。」
メイは初めて嫉妬してしまい初めて諍いことを起こしてしまったこと、エルガーの手を借りて仲直りしたことを話した。
「初めてのケンカですか?」
「ええ。婚約破棄の時も笑って引いてしまいましたし。エルガー様に助けていただいて…」
「エルガーってお見合い相手ですよね?」
「今は友人ですわ。」
「私の目の届かないうちに…もう許しません。」
またメイはリオンのスイッチを押したらしい。
「お兄様もいらしたので、何もやましいことは…」
「ダメです。他の男の話をした時点でダメです。罰をあたえないといけないですね。」
リオンの圧力に、メイは腰が引ける。
メイの座っていたソファがギシっと音を立てる。
リオンが両腕をソファについてメイを閉じ込めた。
「リオン様?」
「メイ様がいけないのですよ?」
リオンの顔が近づき、メイは思わず目をつぶった。
リオンの顔はメイの顔を通り過ぎ、中途半端な位置で止まった。
「リオン様?」
メイは許されたと思って、リオンの名前を呼んだ。
「許されたと思いましたか?」
メイの耳にリオンの唇が触れるかどうかの場所から、囁く。
言葉とともに吐息が耳にかかり、メイは思いっきり目を瞑った。
「…んっ」
思わず声が漏れる。
一瞬で顔が熱を帯びていく。
「メイ様、反省しました?」
「…」
「反省していないみたいですね。」
頭がいっぱいで何も答えられずにいると、リオンはさらに耳の形に沿って指で触れた。
「メイ、リオン様…」
ロベルトが戸を開ける。
中の惨状に、ロベルト声を荒げて二人を注意した。




