三人目。
母親が言い出せなかったのにはもう一つ理由があった。
父親の圧力。
父親は、中学校内のPTA会長をしていた。
恐らく学校の生徒の保護者一偉い立場だと思う。
僕と母親は、思い切って父親に言うことにした。
“ただいま”も言わず帰って来た父親に、母親が話しかけていった。
全て話したみたいだったが、その時は反応がなかったみたいだった。
僕は痣や傷をいたわりながらお風呂に入った。
痛い。いつものことだが。
お風呂からあがると、父親が話しかけてきた。
「お前がいじめられてるって話、本当なんか?」
僕は首を縱に振った。
「……やり返せ」
僕は耳を疑った。
“やり返せ”…?
一体どういうことだ。
いじめを受けている生徒がいるなど、学校として大問題なのではないか。
そしてそれを対処するのが立場の高い者の在り方なのではないのか。
僕が勝手にイメージを高く持っているだけなのか。
父親は次にこう言った。
「俺に恥かかせたら容赦しないからな」
……一体、こいつは親なのだろうか。
いじめや暴力はやり返す方が負けだ、と
小学校で習った記憶がある。
失望した。
いじめられている親がPTA会長だったら支持率が下がるとでも思ったのだろうか。
馬鹿げてる。
こんなの親じゃない。
死んで仕舞えばいいのに。
寒気がした。
その日の夜中の事だった。
父親が死んだ。
あの後母親と父親が口論し、頭を冷やしてくると車でどこかに出かけた途中に交通事故で死んだらしい。
ここでふと、気付いてしまった。
僕が死ねって思った人が死んでいってる……
そんな筈ないか。
この頃は気付いていなかった。
この能力の怖さに。