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第8話 辿り着いたのは戦国時代

時空に開いた穴に吸い込まれた真汰と由里と浩司。

真汰が目を覚ましたのは何と森の中。


「森?なんで…俺、こんなところに」


見慣れない地に戸惑いながらも進むけど、森の雰囲気は日本に近いと感じた。


[もしかして、元の世界に戻って来たのかな?]


まさかあの時空の穴で帰ったのかと最初に思ったけど、改めて見ると少し違うと気づく真汰。それでも途中の川で水を飲んだり、または木の実を食べたりして歩き続ける。

しかし誰も出会う気配はあまりしなかった。


「本当に此処ってどこだろう…日本っぽいけど、やっぱり元の世界とは違う気が」


周りを警戒しながらも進んで行くと、奥の方でカサカサと音がした。


「まさか、人がいるのか」


ついに人が会えたと思って駆け寄ってみる。

しかし真汰が目撃したのは、赤い目とエルフ耳の男が鋭い牙で女性の頸動脈から血を飲んでいた。


「きゅっ、吸血鬼!?」


それは正しく吸血鬼そのもので、思わず驚いて声を上げてしまい。


「なんだ?まだ居たのか!」

「う…うわぁぁぁぁぁ!?」


吸血鬼は女性の死体を投げ捨てると真汰に狙いを変えて襲い掛かって来た。すぐに真汰は慌てて走って逃げ出すけども、吸血鬼の方が早く回り込まれてしまう。


「俺に見つかって、残念だったな?あんまり美味そうな血じゃねぇかもしれねぇが、関係ないな!!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」


まさに絶体絶命でもう終わりだと真汰が確信した瞬間。


「コラ、待ちなさい!」

「あ?」

「え?」


声と一緒に現れたのは、馬に乗って刀を持った侍姿の真汰と同い年ぐらいのポニーテール美少女。さっそく少女は馬から降りて刀を抜いて近づく。


「なんだ、テメェは!」

「神道組だ。魔道隊ではないみたいだけど、人を襲って血を飲む行為は許さない!」

「ふん、神道組か…だが、こんな簡単にやられてたまるか!」


吸血鬼も腰の刀を抜いて、少女に向かって襲い掛かった。だが、少女は逃げる様子はなく刀を構える。


「はっ!!」

「え?うぎゃああああああ!?」


すると少女は目にも止まらない速さで、吸血鬼の刀を持った右腕を斬り落とした。吸血鬼は大きく叫び声を上げながら、血が流れていく右腕を押さえる。

しかしすぐに刀を拾い上げようとしたが、少女が懐から小刀を出して吸血鬼の手に向けて投げつけたので突き刺さる。


「うぐっ!」

「さぁ、この後はどうするつもり?」

「く…クソ!」


悔しそうに吸血鬼は走って逃げた。少女は吸血鬼が逃げたことを確認すると、刀を鞘に納めて真汰に近づく。


「大丈夫?」

「はい、なんとか…その、助けてありがとう」

「別に良いから。神道組として当たり前のことだしね」


少女が手を伸ばしてきたので真汰は手を握るとなんとか立ち上がらせた。


「あの…俺、春本真汰。君は?」

「私は人間道の夏内カナで、この子は愛馬のモモスケ」

「人間道?」


少女は夏内カナと自己紹介して、馬もモモスケと名前を教えた。けれど、すぐに真汰はこの状況を知る為に質問をしてみる。


「ところでさぁ、バンデフ王国を知らない?」

「バンデフ王国?ここはニチモトのムホス国だけど?」

「ニチモトの…ムホス国?」


などとカナはバンデフ王国を知らずに、ニチモトのムホス国だと言う。


[もしかして、ここはバンデフ王国から離れた国…でも、もしかしたら別の異世界の可能性もあるかも?]


真汰はここがバンデフ王国とは別の国か別の異世界だと考え始める。それからあの時空の穴から、ここはやっぱり元の世界とさっきまでの世界とは、確実に別世界だと少し確信し始めた。


「あの、春本さん?」

「え?」

「もしよかったら、穴掘るの手伝ってくれないかな?この人をせめて埋葬させたいから」


カナが木の枝と鞘を使って穴を掘っていた。どうやら、吸血鬼に殺された女性を埋めて埋葬する為に。


「うん…分かったよ。夏内さん」


2人は穴を掘って女性の死体を埋めて供養させた。


「でも、なんでわざわざ?」


真汰は顔の汗を拭いながらも、死者の供養と埋葬をしなくちゃいけないのか聞いてみる。


「なんでって、そりゃあ神道組の隊士としてと、死んでしまった人の弔なきゃいけないし」

「神道組…一体何なの?」

「神道組も知らないし、着てる着物も変だし…じゃあ、5番隊支部に来てみる?」

「え…俺も一緒に?」

「だって、アナタ色々と知らなすぎだし。隊長に見て貰った方が良いよ」


これにはカナの言う通りかもしれないと思う真汰。こんなどう見ても昔の日本みたいな世界で、吸血鬼が現れて襲われるという展開にあってしまうから。

だからカナが言う神道組の支部に此処の事を聞くのが一番だと思う。


「そうだね。じゃあ、俺を連れてって」

「分かった」


真汰はさっそくカナと一緒にモモスケに乗って、神道組の5番隊支部に向かって走った。モモスケから落ちないようにとカナの腰に掴まりながらも、さっきの吸血鬼について質問する。


「あの…さっき僕を襲い掛ったのって、吸血鬼だよね?」

「吸血鬼って、餓鬼道の事?」

「が…餓鬼道?」

「あっ、町に到着したよ」


辿り着いたのは小さな町だった。それもまるで戦国時代か江戸時代に似た町並みで、2人はモモスケから降りる。そして町の人達はカナの姿を見た途端。


「あら、カナちゃん!」

「ようカナ!お勤めご苦労さん」

「カナお姉ちゃん」


老若男女問わずカナに声をかけてくる人がたくさんいた。


「君って、人気があるね?」

「えへへへ…それ程でも」


少し照れ笑いするカナ。2人がモモスケの手綱を引っ張りながら歩いて行くと、目の前には大きな屋敷に着いた。


「ここが、神道組の?」

「そう、神道組5番隊支部屯所」


説明しながらも門を潜る。そこには少し年上で髷をした真面目そうな青年と、青いリボンをつけた金髪で白い天使の羽をした真汰とカナと同い年ぐらい天真爛漫な雰囲気の少女が立っていた。しかも2人ともカナと同じ着物姿。


「カナ、お帰りなさい!」

「お帰りカナ。それとこちらは?」


青年はカナが連れてきた真汰を見て尋ねた。


「こちらは春本真汰さん。春本さん、彼は私の幼馴染の田村コタロウと、天道で私の親友の七浜ルリ」

「はい、人間道の田村コタロウです」

「七浜ルリです。よろしくね♪」

「こちらこそ、よろしく」


カナの幼馴染で親友という田村コタロウと七浜ルリと挨拶して握手する。


「それでカナ、彼は?」

「うん、人間道みたいだけど…なんか神道組も人間道の事も知らないみたいなの?」

「じゃあ、ミカル様に聞いてみなくちゃね」

「ミカル…様?」


さっそく4人は屋敷に入った。屋敷にはカナやコタロウのような人間やルリのような天使はもちろん、頭に角の生えた鬼も同じ格好でいた。


「あれって、鬼だよね?」

「鬼?あれは修羅道」

「よぅ、カナ」


すると4人の前に3人の鬼改め修羅道が立っていた。1人は大柄で顔に傷と髭のある、どう見ても猛者な戦士をした男。ほかの2人は真汰と歳は同じみたいだけど、先程の傷のあるのと顔立ちが似たガキ大将な風貌の少年で、もう1人の少年は少し少女に見える中性な顔立ちのおとなしそうな感じをしている。


「ガンテツさん」

「この人達は?」

「修羅道の古舩ガンテツさんと弟のガンキチ。それから佐々木ハレマル」


カナが3人の紹介をするとガンキチが真汰に近づいた。


「お前、随分と面白い格好をしているが名前は?」

「えっと…春本真汰です…」


睨みながら名前を聞いてきたのでとりあえず名乗った。しかし真汰はその乱暴な口調と態度から、池原のような感じだと思ってしまう。


「なにビクビクしてんだよ?」

「あ…すみません」

「おいおい別に悪い事じゃねぇから謝らなくてもいいんだぞ。とりあえず、仲良くしようぜ♪」


そのまま真汰と肩を組んで笑いながら言うと、これには少し安心していい人だと確信する。


「ちょっと、ガンキチ。いきなり失礼でしょ?本人もまだ戸惑っているみたいだし。なによりも魔道隊の可能性も」

「なんだよハレマル、本当に修羅道の癖にいちいち気にするなんて」

「でも……」


しかしハレマルは真汰が敵じゃないかと疑ったりするけど、あんまり気にしないガンキチだった。


「大丈夫だよ。彼は餓鬼道に襲われてたけど、もしも本当に魔道隊だったら相手は襲うのを止めて逃げ出した筈だしね」

「まっ、なんであれどんな相手でも俺が戦って倒すまでだ!がはははははは!!」


カナが真汰は敵じゃないと念入りに言ってガンテツは自分が何とかすると自信満々に高笑いをする。


「じゃあ、さっそくミカル隊長に見せてくるからね」

「ああ、それじゃあ後は頼んだよ」


そう言ってコタロウ達はこの場から離れた。それから真汰はあることをカナに尋ねてみる。


「あの…夏内さん。さっきから言っている魔道隊ってなんなの?」


真汰が畜生道に襲われた時にカナが口にして、さっきもハレマルが言っていた魔道隊という言葉について聞いてみた。


「私達の敵ね」

「敵?」

「とりあえず、今はミカル隊長に会わなきゃね」


すぐに2人は廊下を歩いて行き、隊長室の前に到着。


「夏内カナ、ただ今帰りました」

「入りなさい」


さっそく襖を開けると、そこには銀髪のロングヘアーでクールが漂う天使の美女が座布団の上に座っていた。あまりの美しさに思わずポーっとなる真汰。


「ねぇ、春本さん?」

「あっ!ゴメン…」

「カナ、彼は?」

「はじめまして、春本真汰です」

「私は神道組。5番隊隊長、天道の冬城(ふゆしろ)ミカル」


冬城ミカルも自己紹介をする。それから2人は部屋に入って、座布団の座るとミカルがお茶を入れてくれた。


「どうぞ」

「「ありがとうございます」」


2人はお茶を入れてくれたお礼を言って飲む。


「それで、アナタはどこから来たのですか?」

「はい、少し分からなくなりそうですけど……」


真汰はさっそく今まで起きたことを全て話した。自分がクラスのみんなと地球という世界からバンデフ王国がある異世界に召喚されて、ダンジョン攻略中にこの世界にやって来てしまった事を全て。


「なるほど、異世界からやって来たのね?」

「はい…と言ってもこことは別の世界に召喚されて、そしてこの世界に転移されたって事ですかね?」

「なんだか、ややこしいねぇ…」


真汰の言う二度の異世界転移というややこしい展開にカナは少し頭が混乱してきた。するとミカルは立ち上がると、タンスから巻物を取り出して2人の前に広げると、それは世界地図。今真汰がいるニチモトは少し日本と形状が似て、ほかにも大陸の絵柄も描かれている。


「この地図を見ても、バンデフ王国という国は存在しないみたいね」

「そうですか…やっぱり俺はまた異世界転移したって訳ですね」


改めて知るとまさかの展開にあってしまったと自覚してしまう真汰だった。


「あの、とにかく色々あって頭が本当に混乱しましたが…人間道や天道や修羅道や神道組ってなんですか?教えてください!?」


だが、すぐにカナとミカルに向けてこの世界や人間道と神道組の事を質問した。


「良いでしょう。ならば、話すとしますか」


さっそくミカルは説明を開始した。

この世界では、6つの種族が住んでいる。

人間道。所謂普通の人間であり一番数が多く特殊能力はない。

天道。天使の羽が生えた種族で元々は天界の住人の末裔とされていた。空を飛び霊術という術で癒しの力と自然を操ることが出来る。

修羅道。頭に角のある鬼のような種族。肉体の身体能力が高くて戦えば戦うほど戦闘力が上がる。

餓鬼道。エルフ耳と赤い目と牙が特徴の種族。どの生物からも血を吸って力を得たり寿命を伸ばしたりできる。

畜生道。さまざまな獣の耳と尾を持つ種族。人間道と同じく数が多くて状況によって全身かその一部を獣化が可能。

地獄道。黒い悪魔の羽が生えた種族で冥界・魔界の住人の末裔。天道と同じ空を飛ぶが、さまざまな魔術と妖術を使うとても危険な存在。

この6つは均衡を保っていたが、突然地獄道がカナ達の住むニチモトの天下統一を企んだ。そして餓鬼道と畜生道とも組んで魔道隊を結成して、殺戮と略奪の限りを尽くす。これを阻止するために天道と人間道と修羅道は、お互い協力して神道組を作った。


「そうですか…つまり俺の世界で言うところの戦国時代に近い状況って訳ですね」

「ちなみに私達の神道組5番隊の隊士数は50人。この辺りの領地を守護しているの」


この説明でなんとか理解できた真汰。今、ニチモトは神道組と魔道隊という2つの組織が戦い合っている戦国時代になっていることに。


「とりあえず、真汰さん。疲れたでしょう。今日はここで疲れを癒しなさい。カナ、彼を案内して」

「はい、ではお言葉に甘えて」

「分かりました。隊長」


2人はミカルにお礼を言って部屋を出た。

今回は少し長く書いた気がしました。

真汰が辿り着いたのは、日本に似たニチモトという世界で神道組と魔道隊が戦しています。

ちなみに分かっているかもしれませんが、今回登場した5番隊の隊長ミカルの名前は大天使のミカエルからです。

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