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第4話 異世界での扱い

異世界に召喚されてから4日目が経った。

真汰が寝床にしているボロ部屋の朝はとてつもなく寒かった。なぜなら窓に隙間があるのか風が吹き出て、壁にも小さな穴が出来ている。それでもなんとか目を覚ました。


「これじゃあ、いつ風邪を引いても分からないな」


とりあえず用意された服に着替えて食堂に行く。途中でメイドに会ったりするが、無視される始末。

食堂に到着するとすでにクラス全員が座っていたので真汰も一番奥の席に座る。

しかし食事はみんなが豪華な料理に対して、真汰だけはパンとスープの貧しいもの。


「くすくす」

「うふふふ」


などとクラスから笑い声が聞こえてくるが仕方がなかった。自分だけ全くスキルも職業もなく、魔力も体力も一般人並みだからお荷物状態だからこんな扱いを受けていたから。


「ねぇ、真汰くん」


すると由里が自分の料理を持って隣に来た。


「前から思ってたけど、その量じゃあ足りないよね?私の半分あげる」


心配したのか料理を分けてあげると言って来た。しかし周りから、強い怒りの視線で見られているのが分かる。

クラスのマドンナである由里と同じ席で一緒に朝食を食べようとするから当たり前。このままじゃあ、自分に何が起きるか分からないので、急いでパンを口に入れてスープを飲み干す。


「ありがとう。でも、気持ちだけ受け取ったから大丈夫」

「え?だけど…」

「本当に大丈夫だから!」


すぐに食堂から出ようとした真汰の前に、腰になんとも強そうな剣を装備した誠司が立っていた。


「あれ春本、どこに行くんだ?」

「いや…別に…ところで、この聖剣って?」

「ああ、昨日手にした途端に気に入っちゃったからね」

「そうなんだ…」


嬉しそうに聖剣を見つめる誠司。じつは昨日、城の武器庫でクラス全員に案内。そこで彼らに合った武器や装備を選ばせようとした。

すると誠司が目に留まったのが、かつてバンデフ王国を救った勇者の聖剣。他の人が聖剣を持つと拒否するかのように重くなるか、もしくは電流みたいなのが流れで相手を痺れさせる。しかし誠司が握った途端に、聖剣は彼を主と認めて持つことが出来た。

なので、国王や兵士達は今まで以上に大喜びをして、誠司本人も聖剣を気に入る。


「じゃあ、俺は図書室に」


真汰は逃げるように図書室に向かう。

図書室に到着した真汰は魔法やこの世界の事を色々と勉強して、知識を得て少しでもみんなの役に立とうと思い始めた。それから時計を確認すると、図書室を出て体力をつけるために訓練場へ向かった。


「あっ、来たぞ」

「本当だ。アイツだな」


当然のようにすれ違うメイドや兵士からは、バカにするかのような目をしたり笑われたりしている。こうして訓練場に到着したら、すでに全員が戦闘や魔法の特訓をしていた。しかし真汰が来た途端に、邪魔者を見るようにして離れていく。


「よう、また1人で特訓か?」

「う…」


だが、池原達でそれぞれ剣や槍や斧を持って真汰に近づいてきた。


「君達こそ…なにしに来たの?」

「なにって、俺達はお前を鍛えてやろうとな」

「ああ、俺達は優しいからな」

「役立たずのお前の為に特訓を」


口ではこう言っているが、実際はただのサンドバック代わりのストレス発散に使われるかもしれない。そう理解した。


「悪いけど…俺は1人が好きだから!」


特訓を断って逃げようとしたが、彼らはそんなのを許されない。


「テメェ、なにムカつくことを!!」

「うぐっ!」


池原は逃げようとする真汰の背中を蹴り付けた。バランスが崩れると、今度は腹部も強く殴る。


「お前、元の世界に取り残された方が良かったじゃねぇのかよ!」

「うう…」


そのまま真汰の背中を強く踏みつけながらも、スキルを使って掌を軽く爆発させた。周りを見ると、みんなはあまり関わらないようにと目を逸らす。


「コラっ!そこの3人!」

「「「うわっ!」」」


だが、そこに芹香が高速移動で池原達を体当たりしてぶっ飛ばし。さらに由里も走って来て真汰を抱きかかえた。


「一体、なにをしていた!」


起き上がる池原達に向かって怒鳴る芹香。


「別に、ただ役立たずのコイツを鍛えようと思っただけだぜ?」

「なにが鍛えようよ!どう見てもイジメじゃない!」

「3人共、恥ずかしくないの?!」


怖い顔で3人を叱る由里と芹香に、なぜか池原達は少し笑みを浮かばせた。


「はいはい、分かったよ。しかし情けねぇな~~~女に助けられた上に、心配されるなんてさ」


真汰に嫌味を言いながらもそのまま去っていく池原達。


「大丈夫?今、回復してあげるから」


由里は掌から回復の光を真汰の腹部と背中に当てると痛みが引いてくる。


「ありがとう。もう大丈夫だよ」

「良かった」

「全く、あの3人は警戒しなくちゃね」


安心する由里と池原達を怒る芹香の2人。けれども、さっき池原が言った言葉が突き刺さる真汰。


「女に助けられた上に、心配されて情けないか…」


自分は本当に情けないと強く落ち込んでしまう。すると真汰達の所に誠司がやって来た。


「春本。アイツらが離れていくのを見てたけど、怪我はどうだ?」

「心配ないよ。由里のおかげでもう治った」


立ち上がって回復したところを見せつける真汰だった。


「そうか。だけど、春本…やっぱりもっと体もちゃんと鍛えないと」

「ん?」

「君は少し僕達の役に立とうと、たまに図書室で勉強をしているみたいだけど…それじゃあ、もっとあの3人にバカにされたり絡まれるだろ?」


どうやら誠司もそれなりに真汰の事を心配している様子。


「だから、もしも訓練をするのなら僕も手伝うしさぁ。それにジドフ団長も君の為に個人訓練をやるって言ってたしね」

「…それもそうだな。でも、これからは魔獣を倒したり、ジドフ団長からは盗賊退治もするかもしれないって言われてるけど?」


なんでも魔獣の混乱を利用して盗賊が悪さしているらしく。その為に、場合によって盗賊とも戦わなきゃならない。


「もちろん、でも僕は誰も殺さないし殺させない」

「え?」

「僕は誰1人死なずに殺さずに戦いたいと思っている。たとえそれが無茶だと分かっていても、人は生きて罪を償って欲しいから」


元々正義感が強い誠司は悪人でも殺さないで戦っていきたいと宣言した。この堂々とした態度と意志には3人は思わず見とれてしまうほど。でも、しばらくすると芹香は呆れる。


「相変わらずの正義感ね…」

「だが、嫌いじゃないぞ」

「「「「ジドフさん!」」」」


そこにジドフが少し笑いながらやって来た。


「それにしても、あの3人は困ったものだな?後で厳しく稽古してやるか」


ジドフもさっきの池原達の行動を見ていたのか、かなり怒っている様子。


「それで、調子はもう良いか?」

「はい、でもなんでアナタも俺に?」


由里達だけでなく、心配してくれるジドフについ理由を尋ねてみる。


「なんかこう…ちょっと昔の俺に似てな」

「昔の、ジドフさんに?」


ジドフは4人に自分の過去を話した。

彼は平民出身者で、小さい頃から騎士団に入るのが夢だった。しかし騎士団に入れるのは殆どが貴族で平民が入れる確率はとても低い。それでも努力して騎士団に入団して、しかも20歳で団長になれたほどに。今では国王や重鎮達からも信頼されて、騎士団員からも慕われている。


「だから、君を見ていると昔の私を少し思い出すんだ。だから、もしも困った事や話を聞くし。稽古もつけてやるからな」

「…ありがとうございます」

「良かったね♪」

「ああ!」


初めはこのまま1人になるのかと思いきや、由里だけでなく自分の味方してくれる人達がいたことに少し安心した真汰だった。

だが、その様子を盗み見している者がいるのに彼らは気づいてはいない。

次回はダンジョン攻略編に入ります。

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